第2話 「嫌悪するのだな」

城に到着すると、ゼロさんは自ら私を客室に案内してくれた。

〇〇「素敵なお部屋……ありがとうございます」

窓から入り込む風がとても涼しく、汗がすっと引いていく。

ゼロ「そう。よかった。 あと、今日の晩餐会に着てもらおうと思って、ドレスを用意した」

〇〇「えっ」

ゼロ「気に入るはずだが……どうだ」

そう言って彼は部屋の隅に足をむけ、クローゼットの扉を開けた。

〇〇「わあ……」

大きなクローゼットいっぱいに、色とりどりのドレスがしまわれている。

綺麗なお花畑のようなその光景に、私は言葉を失った。

ゼロ「全部君のものだ。好きなのを着るといい。 アクセサリーは、ここ。 靴は、ここに」

彼が引き出しを引くと、次々と美しいものが出てくる。

(こ、こんなにたくさん……)

〇〇「ゼロさん、あの……こんなにいただけません」

何とかそう言うと、彼は不思議そうに首を傾げる。

ゼロ「どうして? 恩人に礼をしたい」

(でも……)

なんだか申し訳なくて、私はクローゼットから目をそらし、顔を伏せる。

そんな私の顔を、ゼロさんがまじまじと覗き込んだ。

ゼロ「何だ、もしかして足りないのか?」

彼は、真っ直ぐに私の瞳を見つめている。

ゼロ「それとも、気に入らないか?」

〇〇「……っ」

胸が大きく音を立てて、私は何度も瞬きを繰り返した。

〇〇「い、いえ……そんなことは」

(でも、やっぱり……)

お断りしようとすると……

ゼロ「よかった。じゃあ、ゆっくり選ぶといい」

満足そうに微笑んで、彼は私に背を向けてしまう。

〇〇「あのっ、ゼロさ…-」

引き止めようと、慌てて彼を追おうとすると……

〇〇「……っ!」

足をもつれさせ、倒れ込みそうになってしまう。

ゼロ「危ないっ……」

とっさにゼロさんが振り向き、私の腕を掴んで支えてくれる。

〇〇「す、すみません……っ」

顔を上げると、ゼロさんと至近距離で目が合って、飛ぶようにその腕から逃れたけれど、全身が火のように熱くなっていた。

ゼロ「……」

眼鏡の向こうで、ゼロさんが推し量るように目を細めた。

〇〇「あ、あの……。 こんな風に扱われると、なんだか……」

ゼロ「こんな風?」

〇〇「贈り物……とか。私、普通の暮らしをしていたから、お姫様扱いには慣れてなくって……」

私が震える声でそう言うと、ゼロさんは考え込むように顎に手を当てた。

ゼロ「……理解した。 君は過剰に物質を与えられることを嫌悪するのだな」

(過剰に物質を……って)

ゼロ「すまない。もうしない。 晩餐会も、形式ばらないものに改めるからドレスは着なくていい。 と、なると……」

顎に手を当ててぶつぶつとつぶやきながら、ゼロさんは部屋を出ていってしまう。

(ゼロさんって、一体……)

さわやかな風を感じることもできないほどに、私は戸惑うことしかできなかった…-。

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