第5話 温かで、不器用で……

ザント「アンタ……なんのつもりだ?」

ザントさんに、不意に声をかけられて……

ザント「暇なら、他にやることだってあるだろ。 なのにどうしてわざわざ俺のことを気にかけるんだ?」

○○「それは…―」

ザント「……」

冷たさがかすかに綻び、困ったように眉が歪められる。

ザント「大方……兄貴にでも頼まれたんだろ」

○○「!」

ザント「だから、俺に気を使ってる。違うか?」

苦しげに細められる目を見て……

○○「それは、そうなんですが……。 でも、私自身も気になるんです。ザントさんのこと」

ザント「!」

そう伝えると、ザントさんの瞳が少し見開かれた。

ザント「まあ、いい……もうこれ以上俺になんて気を使う必要はない」

どこか諦めたように口にされる言葉に、私は唇を噛んだ。

ザント「……ほらな、またそう困ったような顔をする。 俺が、アンタにそんな顔をさせてるんだろう? ……俺が関わるとろくなことにならないんだ。アンタも」

(そんな……)

天高く昇る太陽の光が、菜園の野菜達を明るく照らす。

けれど、私の胸はどうしようもなく苦しくて……

○○「そんなこと……言わないでください」

絞り出すような声でそう言うと、ザントさんは、慌てたように襟巻を押し上げた。

ザント「すまない……ますます困った顔をさせてしまった。 いいんだ……俺のことはアンタが気にすることじゃない」

○○「あ……」

そして……

うつむく私の頭に、彼の大きな手がのせられる。

花や土を優しく愛でる手が、私を気づかっている。

(温かい手……)

想像よりも大きな手のひらに、胸が音を立て始める。

そっと視線を上げて、彼の顔を見ると……

ザント「……」

優しさと、寂しさをたたえた眼差しが、私に注がれている。

ぎゅっと心が締めつけられて、私はやっぱり言葉を飲み込むことしかできない。

ザント「……」

壊れ物を扱うかのように、そっと私の頭が撫でられる。

ザント「こういうのは、苦手だ……」

不器用な手つきだけど、それはとても心地よくて……

ザントさんの手の熱を、いつまでも感じていたいと、そう思った…―。

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