第4話 足湯に浸かって

湯気がそこここで立ち上る廻天の街で、私はフロストさんと二人穏やかな時間を過ごしていた。

フロスト「そろそろ温泉の方へ行ってみるか」

お猪口が空になってしばらく……フロストさんが、長椅子からゆっくりと立ち上がる。

その顔には、少し艶が戻ってきていた。

〇〇「そうですね、是非」

ほっと安堵の息を吐いた後、私はフロストさんと並んで歩き始めた。

……
さまざまな看板が掲げられる街を眺めながら、温泉宿へ向かっていると…-。

(あれ? あの看板は……?)

ふと目に入ったそれは、足湯の看板だった。

フロスト「足湯とはなんだ?」

フロストさんもそれに気づき、興味深そうな表情を浮かべる。

〇〇「靴を脱いで、足だけお湯に浸かる温泉のことです」

フロスト「なるほど、見てみたい」

(足湯、か……結構歩いたし、少し休めるかな)

川べりにある露天温泉に到着すると、フロストさんが感心したように息を吐いた。

フロスト「美しいところだ。風呂が外にあるなど、スノウフィリアでは考えられないことだが……」

〇〇「確かに、そうですね」

フロスト「ここでは湯に浸かりながら、自然の景色を楽しむことができるのだな」

(よかった、気に入ってくれたみたい)

満足げなその表情に、嬉しさが込み上げてくる。

〇〇「はい。しかも足湯だから服を脱がなくても、気軽に楽しめますしね」

何気なくそう言うと……

フロスト「ほう。足湯でなくとも、俺は構わないが?」

〇〇「……!」

銀色のまつ毛の下で、彼の瞳が少し意地悪そうに細められる。

〇〇「……っ」

その言葉に、鼓動が一気に速くなる。

フロスト「なんだその反応は? まさか……嫌、なのか?」

フロストさんが唇の端を吊り上げ、妖艶な笑みを浮かべた。

〇〇「それは…-」

気恥ずかしくて顔を逸らしてしまうと、彼はふっとため息を吐き出す。

フロスト「まったく……いちいち反応して、忙しい奴だ」

(からかわれた……)

涼しげな彼の表情を前に、私は頬に熱が集まるのを抑えることができなかった…-。

……

湯気が立ち上るお湯の中に、ゆっくりと足を浸ける。

その温かさ一息吐いて目を上げると、近くの川の水面を紅葉が流れていくのが見えた。

〇〇「綺麗ですね……」

フロスト「ああ。まるで廻天の民が用意している着物の柄のようだ」

私達の他にお客さんの姿はなく、美しい景色を二人だけで独占しているような気がして、なんだかとても贅沢な気持ちになる。

フロスト「足しか湯に入っていないが、温まるものだな」

ふと、フロストさんの爪先が私の足に触れた。

〇〇「……っ!」

フロスト「どうかしたのか?」

〇〇「あの……足が触れて…-」

フロスト「慌てるほどのことではないだろう?」

何か言おうと顔を上げた時……フロストさんの白い頬にほんのりと赤みがさしていることに気がついた。

(よかった。血色が良くなってるみたい)

フロスト「どうした? そんなふうに見つめて……ああ。やっぱり俺に触れてほしいのか?」

悠然と見つめられて、私は慌てて景色に目を戻す。

(体が熱い……)

足だけしか、お湯に浸けていないはずなのに……

触れ合う肌とお湯の熱さに、のぼせそうになってしまうのだった…-。

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