第2話 心配を押しこめて

廻天は、例外を除き療養の必要がある者のみが立ち入りを許可される湯治の地…-。

(フロストさん……本当に大丈夫なのかな)

なんでもない口ぶりで話すけれど、彼の顔に少し疲れの色が浮かんでいるような気がした。

フロスト「お前は、廻天に来たのは初めてではないのだろう?」

ふと、フロストさんが私に顔を向ける。

陽の光を反射した銀髪が揺れ、より一層輝いて見えた。

〇〇「はい。以前にも那由多さんに招待いただいて」

美しさに見とれつつそう返すと、フロストさんはまた街並みに視線を移す。

フロスト「ここにはさまざまな温泉があると聞いた。 いずれも、スノウフィリアにはないものだ。非常に興味深い……いろいろと見てみたい」

〇〇「なら、私でよければ…-」

(あ、でも…-)

フロストさんの体調のことが気になり言葉を止めると、彼の口元が弧を描いた。

フロスト「どうした? 案内を期待したのだが」

誘うように視線を注がれ、ドキリと胸が高鳴るけれど……

〇〇「案内させていただきたいんですが……フロストさん、本当に体調は大丈夫ですか?」

不安がぬぐえず、そう尋ねる。

すると…-。

フロスト「大丈夫だと言っているだろう」

きっぱりとした口調は、それ以上の追及を許してはくれない。

(あまりしつこくしない方がいいのかも)

(大丈夫だって、言ってるし……)

そう思った私は……

〇〇「わかりました」

なんとか不安を抑えつけてそう言うと、彼は私を安心させるように微笑を浮かべた。

フロスト「お前の案ずることではない」

さりげない彼の優しさと、これから一緒にいられる時間を思い胸が温かくなってくる。

〇〇「それじゃあ、楽しんでもらえるように頑張りますね」

(せめて、リラックスできるような場所を案内しよう)

(温泉はもちろんだけど、何か温かい食べ物とか? 体に良さそうなものは…-)

必死になって思考を巡らせていると……

フロスト「何か企んでいる顔だな」

顔を上げると、フロストさんが楽しげに私を見つめていた。

〇〇「そんな、企んでいるなんて…-」

慌てて言うと、彼の口元がふっと緩む。

フロスト「そうむくれるな。お前が何やら張り切っている姿がかわいらしいと思っただけだ。 楽しみにさせてもらおう。 さあ、思う存分案内してくれ」

フロストさんは流れるように、私にすっと手を差し出した。

〇〇「ありがとうございます」

けれどその手は、やっぱり少し冷たくて……

胸に小さな不安を残したまま、私は彼と並んで歩き出した…-。

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