第1話 ぬぐえぬ不安

湯元の国・廻天 影の月…-。

街の至るところから湯気が立ち上り、情緒ある建物と相まって華やかな雰囲気を醸し出している。

那由多さんから招待を受けた私は、久しぶりにこの地に足を踏み入れていた。

それぞれ癒しを求めてやってきた人達の、安らいだ顔を眺めていると…-。

??「〇〇か?」

(あれ? この声……)

名前を呼ばれて振り返ると、雪の国・スノウフィリアの王子、フロストさんが悠然と立っていた。

普段とは違う装いもやっぱり厳かで……私は一瞬で彼に目を奪われた。

〇〇「フロストさん! いらしてたんですか?」

フロスト「ああ。オマエも来ていたとはな。どこか具合が悪いのか?」

〇〇「いえ、私はご招待を受けて。でも……」

廻天は、温泉での療養が必要だと判断された人だけが立ち入りを許可される場所で……

その他は、王族からの招待がなければ入ることはできない。

〇〇「フロストさんこそ……どこか具合を悪くされているんですか?」

心配になって尋ねると、フロストさんは余裕のある笑みを浮かべた。

フロスト「そのようなことはない。ただ、連日の公務で少し疲労を溜めてしまっただけだ」

彼はいつものように、堂々とした口調でそう告げる。

フロスト「心配は無用だ。療養など、大げさに言うことではない。 元々、この国には興味があったからな。招待に応じることにしたのだ」

しっかりとした、まるで自身と私に言い聞かせるような口調に、かえって不安が煽られて……

(大丈夫かな……?)

私は不安がぬぐえずに、少し青白い彼の顔を見上げた…-。

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