パーティホールで足に怪我をしてしまった私は、トルマリに背負われて休憩室へとやってきた。
(やっぱり少し痛いかも……)
さっきまでは慌てていたせいか全く気にならなかったものの、思った以上に傷が深かったのか、少しずつ痛みが増してくる。
するとそこに、救護室に行っていたトルマリが戻ってきた。
トルマリ「〇〇、お待たせ。ほら、足を見せて」
〇〇「えっ? で、でも、このぐらいなら自分で……」
トルマリ「つべこべ言わないの! いいから早く見せて」
トルマリの剣幕に負けてそっと足を伸ばすと、彼は救護室でもらってきた包帯を優しく巻いてくれる。
トルマリ「きつくない? 大丈夫?」
〇〇「うん……ありがとう」
トルマリ「どういたしまして」
トルマリはそう言って優しい笑みを浮かべる。
けれども……
トルマリ「あっ!? ……〇〇のドレス、汚れちゃってる……」
〇〇「えっ? ……あ、本当だ……」
どうやらさっきの男の人が落としたシャンパンがかかってしまったらしく、ドレスの裾に大きな染みが残ってしまっていた。
(どうしよう。これじゃあもう、パーティには……)
トルマリも同じことを思ったのか、私達は二人で沈み込んでしまっていた。
けれども、少しの間の後…-。
トルマリ「……あっ、そうだ!! ねえ〇〇。ぼく、いいこと思いついたよ!」
〇〇「えっ? それって…-」
(……! ト、トルマリ!?)
トルマリはどこか悪戯っぽい笑みを浮かべた後、私のドレスの裾を掴んで汚れた部分を破き始める。
すると、私の脚もどんどんあらわになっていき…-。
〇〇「や、やめて……!」
トルマリ「ふふ、大丈夫だよ。悪いようにはしないから。 それに、ぼくが思いついたこと我慢できると思う?」
トルマリはそう言って、どんどんドレスを破っていってしまう。
そして……
トルマリ「できた!」
丈を綺麗に揃えた後、トルマリは満足そうな笑顔を向けてくる。
(す、すごく短い……)
ドレスの丈は膝上になり、私の脚は今までにないほどあらわになってしまっている。
トルマリ「やっぱりこの位のスカート丈の方が、〇〇は似合うよ」
〇〇「でも……やっぱり恥ずかしい……」
トルマリ「何で? こんなにかわいいのに!」
トルマリに右手を強く握られた後、そのまま鏡の前まで連れていかれる。
トルマリ「ねっ、かわいいでしょ?」
(あ……)
スカートの裾はすごく短くなってしまったものの、トルマリの言う通り私に似合っているのか、今までよりも華やかさが増しているように見えた。
(恥ずかしいけど……悪くないかも)
私がそう思いながら、なおも鏡を見つめていると……
??「あの……大丈夫ですか?」
〇〇「えっ……? あ……」
声がした方を見ると、そこにはラークくんが立っていた。
〇〇「さっきはごめんなさい、ダンスの途中だったのに邪魔しちゃって……」
ラーク「いえ……大丈夫ならよかったです。それよりトルマリさん、すごく力持ちなんですね。驚きました」
トルマリ「うん。だってぼく、男の子だもん」
ラーク「えっ……!?」
(ト、トルマリ、いきなりそんな……)
恋する少年に対して、トルマリはあっけらかんと真実を告げてしまい……
ラークくんは驚きのあまり言葉が出てこないようだった。
トルマリ「でも、きみの気持ちは嬉しかったよ。ありがとう」
ラークくんの心中を察しているのかいないのか、トルマリは彼に花のような笑顔を向ける。
その時…-。
ホール係「紳士淑女の皆様、ホールへお集まりください。これより主催者がティアラの贈呈式を執り行います」
パーティホールの方からアナウンスが聞こえた瞬間、トルマリの瞳が輝く。
そして……
トルマリ「行こう、〇〇」
〇〇「うん。えっと……それじゃあラークくん、またね」
ラーク「えっ? あ……は、はい」
私が未だ呆然とするラークくんに別れを告げると、彼は小さく礼をして去っていく。
そうして彼の背中を見送った後、トルマリと私は手を繋いでホールへと向かったのだった…-。