パーティホールに、ゆったりとした曲が流れる中……
ホールの中央では、トルマリとラークくんが仲良く手を取り合いながら踊っていた…-。
(ふふっ。二人とも、本当にかわいいなぁ)
黄金色のシャンパンを飲みながら二人の姿を見つめた後、パーティ会場を見渡す。
すると女性達は皆、色彩豊かなドレスや輝く宝石などで美しく着飾っていた。
(……トルマリの言う通り、もっと華やかなドレスにした方がよかったかな?)
ぼんやりとそんなことを考えていると……
男性「……ひっく」
シャンパングラスを持った千鳥足の男性が、向こうから近づいてくる。
(あ……飲み過ぎちゃったのかな?)
なんとなく様子が気になり、少しの間彼の様子を伺っていると……
男性「……っ」
(あっ、危ない!)
私の目の前で男性からシャンパングラスが滑り落ちたかと思うと、彼はそのまま前のめりに倒れてしまった。
〇〇「大丈夫ですか!?」
しゃがんで声をかけると、男性は真っ赤な顔をしながら何事かをつぶやいており、体からはお酒の臭いが強く漂ってきた。
(ど、どうしよう。誰か人を呼ばないと……)
そう思いながら辺りを見回すものの、ここはパーティホールの端であるためか人通りが少なく……
グラスが割れる音も音楽にかき消されてしまったのか、こちらを気にしてる人は誰もいないようだった。
けれども、その時…-。
トルマリ「〇〇、どうしたの!?」
異変を察知したのか、トルマリが息を切らしながら駆けつけ、私と男性の顔を交互に見比べる。
〇〇「え、えっと、この人ちょっと飲み過ぎちゃったみたいで……」
トルマリ「あ……本当だね。意識もかなり朦朧としてるみたいだし……」
そう言うや否やトルマリはホール係を呼びに行き……
男性は駆けつけたホール係達の手によって、すぐに救護室へと運ばれていった。
(ふう……ひとまず、何とかなったみたいでよかった……)
私は安堵感から胸を撫で下ろす。
すると…-。
トルマリ「〇〇、怪我しているよ」
〇〇「え? ……あっ」
トルマリに言われ、割れたグラスの破片で足の甲を傷つけていたことに初めて気がついた。
トルマリ「ほら、〇〇。ぼくの背中に乗って」
トルマリが背中を向け、私の前でしゃがむ。
(で、でも、皆も見てるし……)
トルマリ「〇〇、何ぼーっとしてるの! 早く手当てしなきゃ、バイキンが入っちゃうよ」
〇〇「う、うん。わかった。それじゃあ……」
強い口調で急かすトルマリの剣幕に、私はためらいながらも彼の背中へと身を預ける。
トルマリ「〇〇、大丈夫?」
〇〇「う、うん」
トルマリ「わかった。それじゃあ行くから、ちゃんと掴まっててね」
トルマリが歩みを進めると、私達の姿に気づいた人々やラークくんが目を丸くしてこちらを見つめていた。
(……っ、な、なんか、ものすごく注目されちゃってる)
(けど……そうだよね。華奢なトルマリが私を軽々と背負ってたら、驚くのも無理はないというか……)
(……でも、トルマリの背中って意外と大きいかも)
(それにさっき駆けつけてくれた時も、男らしくて…―)
そう思った瞬間、私の胸にどこか切なく甘い痺れが走り……
私はトルマリの背中に体を預けながら、胸の鼓動が伝わらないよう小さく祈ったのだった…-。