第2話 パーティを開きたい

真冬にも関わらず、そこだけ春の魔法がかけられたような空中庭園・・・・ー。

私はそこで帽子屋さんとお茶を楽しむことになった。

(相変わらず不思議な人・・・・)

マッドハッター「・・・・」

静かに紅茶の入ったカップを傾ける様子はまるで美術品のようで・・・・

(なんて綺麗)

じっとそんな帽子屋さんの様子を見ていると、彼は空を仰ぎ見た。

マッドハッター「おや、雪が降ってきたようですね」

見上げれば、粉雪が春めいた庭へとふわりふわりと舞い落ちてくる。

(空はこんなに晴れているのに?)

不思議に思い掌に受けてみたけれど、冷たさを感じないまま雪はすぐにとけてしまう。

マッドハッター「時に・・・・『クリスマス』というパーティをアリスはしていたと遠い昔に言っていましたが」

○○「クリスマスですか?」

マッドハッター「ええ、アリスのことは・・・・君には以前お話しましたね?」

○○「はい・・・・」

(確か、遥か昔にこのワンダーメアに現れた少女だって聞いたけど・・・・)

(私の知ってるあの童話の『アリス』とそっくりだったはず)

突如ワンダーメアに現れた少女、『アリス』・・・・

この国は、その『アリス』という少女を取り巻いて形成されたそうだ。

(朝夜が逆転したり、森が動いたり・・・・トランプの兵隊、それに終わらないお茶会)

昔のワンダーメアは、あの童話の『不思議の国のアリス』にそっくりな国だったと言う。

(けど、アリスがいなくなってワンダーメアは急激な変化を遂げたって・・・・)

記憶を思い出しているうちにも、彼の話は続く。

マッドハッター「彼女は、クリスマスにはケーキを食べて・・・・。 サンタに扮した父親からプレゼントをもらったと言っていましたが、君はどうなのでしょう?」

○○「私のいた場所でもクリスマスは確かにありましたが・・・・」

(私の知るクリスマスとは少し違うのかな・・・・?)

微かに首を傾げれば、帽子屋さんは唇に半月を描く。

しなやかな笑みを向けられて、私の心臓はどきりとした。

マッドハッター「せっかくですから、私も華やかなパーティを企画したく思っているのです。 ですが肝心のクリスマスの贈り物がどうも浮かばなくて・・・・。 お嬢さん、君はプレゼントを選ぶ時に一番大切なものは何だとお考えですか?」

(大切なもの?)

私は彼の問いかけに・・・・ー。

○○「たとえば・・・・愛、でしょうか?相手のことを思いやって選ぶような」

マッドハッター「ほう・・・・それは素敵な回答だ。 まあ実際はお嬢さんの言う通り、そんなもの、贈る相手によって違うわけですが・・・・」

○○「・・・・?」

(この感じ・・・・前に帽子屋さんと会った時と同じだ)

(どうしてこの人は私にいつも不思議な質問をするのかな?)

私の抱く疑問をよそに彼は紅茶を飲み干すと、椅子から立ち上がった。

マッドハッター「さてと、せっかく遠い所からお越しいただいたのですから。 少し君を冬のマッドネスへご案内しましょうか?」

○○「あ・・・・っ」

ふわりと抱き寄せられるように、彼が私の腰に手を添える。

優雅な動きで彼の腕の中へ誘われ、また鼓動が早くなった。

(花のような香りがする・・・・これは紅茶の匂い? それとも・・・・)

私を腕の中に抱いた帽子屋さんは、くすりとあの謎めいた笑みを再び浮かべたのだった・・・・ー。

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