第5話 意外すぎる弱点

ウィルさんに案内されて巡る撮影所は、その後も驚きと恐怖の連続だった。

さきほどから何かあるたびに心臓が騒いで、そろそろ限界が近い。

胸を抑えていると、さりげなくウィルさんの視線を感じた。

ウィル「僕、本当に君をここに連れてきて良かったと思ってる。まあでも、僕ももう君の反応はしっかり記録できたから……ちょっと休もうか?」

○○「ぜ、是非お願いします」

ウィル「もう少し行った所に休憩所があるから」

ウィルさんなりの気づかいに感謝して、私は彼の横を歩く。

その時…―。

○○「痛っ……」

指先に刺すような痛みを感じた。

ウィル「どうしたの?」

○○「セットに指をひっかけたみたいです……」

通路の壁に十字架をモチーフにした先の鋭い欄干が立てかけてある。

(これのせいかな?)

指先を見ると、人差し指の腹に小さな切り傷があり、血が出ていた。

ウィル「大丈夫? 見せてみ――― ち、ちち、血だ!!」

私の指先を見たウィルさんが、ぎょっとする。

○○「えっ、ウィルさん!?」

見る間に顔を真っ青にして、ウィルさんがその場にしゃがみ込む。

○○「大丈夫ですか?」

(どうしたんだろう?)

私は辺りを見回して……少し行った所にある、三人掛けの椅子に彼を横たえた。

しばらくすると、ウィルさんは眼鏡を押さえながら上体を起こした。

ウィル「ゴメン。案内するとか言って、迷惑かけちゃったね……僕、血が苦手で……」

○○「え……」

伝えられた意外な言葉に、額を抑える彼を見る。

○○「映画であんなに大量の血や傷がでてくるのに……」

彼の編集スタジオで見た、作りかけのホラー映画を思い出す。

○○「それに、その全身のタトゥーは?」

スーツの袖から覗くトライバル柄を指差す。

ウィル「これはただのペイント。自分の肌に針を刺すなんて、冗談じゃないよ! 映画のだって、全部血糊だしね。けど、本物だけはダメ。見た瞬間に気持ち悪くなる……」

○○「血糊と本物って、わかるんですか?」

ウィル「わかるよ! 全然違う!」

(全然違う? そうなのかな。それにしても意外……ウィルさんにそんな一面があるなんて)

ウィル「そうだ、怪我、大丈夫?」

○○「まだ少し痛みますけど……」

確認しようとした傷口を、ウィルさんから見えないようハンカチで隠す。

ウィル「ありがとう、気をつかわせちゃうね。救護室があるから、すぐにスタッフに手当させよう」

椅子から立ち上がったウィルさんが私に微笑む。

ウィル「もう、大丈夫……」

そういうけれど、まだ本調子ではないようで顔色が少し悪い。

だけど笑いかけてくれる様子に、彼なりの細やかな気づかいを感じる。

(変わった人かなって思ってたけど……)

ウィルさんの意外な一面を知って、私は彼に気付かれないように、くすりと笑みをこぼしたのだった…―。

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