第4話 二人で作り上げる未来

薄暗い部屋の中……私はベッドに押し倒されたまま、ディオンさんの瞳を見つめていた。

その瞳が悲しげに揺れたかと思えば……

ディオン「……」

ふっと、悲しみは微笑みに掻き消された。

ディオン「悲しそうなのは、お前の方だ」

ベッドのスプリングが軋み、彼の体温が遠ざかる。

ディオン「俺のためにお前が心を痛める必要はない」

静かにそう告げると、ディオンさんは私に背を向けて歩み寄った。

〇〇「ディオンさ…-」

ディオン「用はもう済んだだろ」

日の当たらない窓辺で、彼はこちらを振り返ることなく見つめている。

その背中は、やっぱり悲しげで……

(私は……あなたの笑顔が見たい)

そんなふうに強く思いながら、彼の部屋を後にしたのだった…-。

……

翌日…-。

ディオン「〇〇……これは、どういうことだ?」

再び部屋を訪れた私を見て、ディオンさんが眉をひそめた。

私の後ろには、カーテンや家具がのった台車を引くエンゼの従者さんが控えている。

〇〇「セフィルさんに内装を変える許可をいただきました。 もう少し部屋を明るくできないかなって思って……」

ディオン「……」

〇〇「すみません……お節介なのはわかってるんですが」

ディオンさんは何も言わず、家具ののった台車を見つめていたけれど、やがて小さく息を吐いて、私の頭にそっと手を乗せた。

ディオン「世話焼きの姫様だ。意外と、旦那は尻に敷かれるかもな」

穏やかな口調でそう言った後、彼は笑みをこぼす。

(よかった……)

従者「ディオン様。カーテンはどちらがよろしいでしょうか?」

ディオン「若草色と藍色か……お前はどっちがいいと思う?」

〇〇「私ですか?」

ディオン「ああ」

不意に意見を求められ、言葉に詰まる。

〇〇「それは……ディオンさんが決めてください」

ディオン「俺だったら、全部暗い色にするぞ?用意した意味がないだろう」

ディオンさんは、ずらりと並べられた家具を見て苦笑した。

ディオン「それに…-」

彼が私の肩を、ぐっと抱き寄せる。

ディオン「どうせこの部屋を訪ねてくるのはお前くらいだからな」

美しい顔が間近に迫り、囁かれたかと思えば……そのまま耳に唇を落とされた。

〇〇「……っ」

ディオン「さあ、どのカーテンにしようか?」

(もう……)

従者さんの前だというのにお構いなしな彼に少し呆れながらも、私は再びカーテンを見つめる。

〇〇「じゃあ……若草色がいいです。きっと部屋が明るくなりますよ」

ディオン「……明るすぎるような気もするが」

〇〇「暗い色は気持ちまで暗くなってしまいます」

ディオン「言ってくれる」

ディオンさんは機嫌良さそうに笑うと、台車にのせられた家具に視線を移す。

するとその時、別の従者さんが茶器や小物類を持ってやって来た。

ディオン「茶器も、お前好みのものを用意してもらおうか。 見ての通り、天の国の陶器は美しい。お前も気に入るだろう」

〇〇「わかりました。それなら……」

彼の肩を抱かれながら、並べられた茶器を見比べる。

〇〇「この花柄のものなんてどうですか?」

ディオン「……本当にお前はかわいい奴だな」

その後もディオンさんは、苦笑を浮かべながらも私の意見をほとんど取り入れてくれた。

(楽しいな)

(いつかディオンさんと、一緒に暮らすことになった時も…-)

その時、以前彼に言われた『俺はやめとけ』という言葉が頭をよぎる。

けれど……

(……それでも、私はあなたと一緒にいたい)

(今みたいに、二人で笑い合って……寄り添い合っていたいです)

そんな思いを抱きながら、私は彼の肩に頭を乗せ、先ほどよりも少し明るくなった室内を見つめたのだった…-。

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