第1話 ミントの香り

天の国・エンゼ 蒼の月…-。

(素敵な式だったな)

エンゼの王族の結婚式に来賓として招待された私が、式が終わってから一人、幸せそうな新郎新婦の姿を思い返していると…-。

(この香りは……)

どこからともなく、ミントの香りが漂ってくる。

覚えのあるその香りに、少しの期待を抱きながら辺りを見回すと……

〇〇「……ディオンさん!」

すぐ傍の木陰には、煙管をくゆらせているディオンさんの姿があった。

ディオン「〇〇か」

こちらに気づいたディオンさんが、口元を緩める。

〇〇「お一人……ですか?」

ディオン「ああ」

わずかに顔を逸らした彼が、ゆっくりと長い煙を吐く。

ディオン「欠席するつもりだったが、セフィルがうるさくてな」

〇〇「そうだったんですね……すみません。式の前にご挨拶できなくて」

ディオン「無理もない。俺の席は、お前がいる場所からは遥かに離れた後ろの方だったからな」

ディオンさんは煙管を咥え、皮肉っぽく笑った。

(この国とディオンさんの国は、まだ…-)

遥か昔、かつては一つの国だった天の国と地の国は分裂してしまい、何度か国交復活を試みたものの、今も冷戦状態が続いているという。

ディオン「まあ、こうして俺が来られるだけでも天地の関係の修復は進んでるのか。 さすがはセフィルってところだな」

ディオンさんは静かに煙を吐き出す。

木の葉が影を落とす彼の横顔は、どこか憂いを帯びていて…-。

〇〇「……お会いできて嬉しいです」

心からの想いを込めて微笑んだ私を、ディオンさんが見つめる。

そして、ぐいと肩を抱かれて……

〇〇「……!」

気づけば私は、ディオンさんの腕の中に抱かれていた。

ディオン「嬉しいことを言ってくれるじゃないか」

ディオンさんの長い指が、私の顎を持ち上げる。

すぐ傍で微笑む彼の瞳に、胸がどきりと高鳴った…-。

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