第5話 進みだした物語

どこからか聞こえた小鳥のさえずりで目を覚ます…-。

ベッドから体を起こすと、プリトヴェンさんの姿はなくなっていた。

〇〇「プリトヴェンさん……?」

辺りを見回すと、扉が開いて明るい笑顔が飛び込んでくる。

プリトヴェン「〇〇、起きた?」

〇〇「はい。あの……?」

プリトヴェン「見回りしながら、軽く体を動かしてきたんだ」

少し息を弾ませている彼は、額の汗をぬぐうと椅子へと腰を下ろす。

プリトヴェン「この世界で意味のあることかは、わからないけど。 やっておかないと、なんだか落ち着かなくて」

太陽の光が、彼の横顔を爽やかに照らし出す。

〇〇「それも、癖ですか?」

彼らしい行動に自然と笑みがこぼれると……

プリトヴェン「確かに、そうかもしれない」

小さく笑って肩をすくめる彼に、私も微笑みを返した。

プリトヴェン「……そういえば、昨夜君が教えてくれた話を聞いて、俺も一つ思い出したよ」

〇〇「お話を、ですか?」

頷いた彼は、テーブルに置いてあったリンゴを一つ手に取る。

プリトヴェン「『死神とリンゴ』って話なんだ」

〇〇「死神、ですか?」

物騒な言葉の響きに、私は少し身構えてしまう。

プリトヴェン「うん、森に美しい美女が住んでいて…-」

彼の話によると……

城の王子に恋をした娘は、毎日のように鏡を見つめて彼を想っていた。

けれど、その娘を好きになった死神が、まやかしを鏡に映し出し……

プリトヴェン「死神は娘にリンゴを食べさせて魂を連れ去ろうとしたけど……王子の口づけで救われたっていう話」

(リンゴを食べさせて、魂を……?)

プリトヴェン「昔から弟と鍛錬ばかりしてたから、絵本ってあんまり馴染みがなくって。 詳しい話はよく思い出せないんだけど、そんな内容だったと思う」

〇〇「確かに、ここにはリンゴも鏡台もありますし…-」

彼の話を受けて、鏡台の方へと体を向けた、その瞬間……

窓から流れ込んだ風が、鏡台にかかっていた布を拭き落とした。

〇〇「あ……」

あらわになった鏡面に映った私とプリトヴェンさんの姿が、不自然に揺れたような気がした…-。

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