第3話 赤い果実

柔らかな木漏れ日が、動物達と戯れるプリトヴェンさんを照らす…-。

(癒されるな……)

絵本の挿絵のような光景に、いつまでも眺めていたい気持ちになってしまう。

〇〇「絵本の中の動物だから、こんなに人懐っこいんでしょうか」

プリトヴェン「嬉しいけど……身動きが取れなくて少し困るかな」

苦笑する彼の膝には、真っ白なウサギが座っている。

プリトヴェン「そろそろこの物語のことを調べないと」

彼はそう告げると、膝に乗っていたウサギをそっと地面に下ろした。

プリトヴェン「絵本を読む子ども達のためにも、しっかり役目を果たさないとな」

〇〇「そうですね。でも、私達はなんの童話の中にいるんでしょう?」

プリトヴェン「うーん……」

その時、考え込む彼のマントを狼が引っ張った。

狼の視線の先には立派なリンゴの木があり、動物達が集まっている。

プリトヴェン「食べたいってことか? 今、俺達は考え事をしてたんだけどな」

ふっと微笑む彼と目が合って、私も笑ってしまった。

プリトヴェン「……仕方ないな。 ちょっとそこで待ってて……よっと」

小さく息を吐くと、プリトヴェンさんは手近な木の枝に手を伸ばす。

(すごい……)

実をいくつか取った彼は、淀みない所作であっと言う間に地面へと降り立つと…-。

確かめるように香りを嗅いで、リンゴを一口かじった。

プリトヴェン「うん、瑞々しくて美味しい。 〇〇も食べるか」

動物達に渡し終えると、プリトヴェンさんは私にもリンゴを差し出してくれる。

プリトヴェン「あっ……女性はこんな食べ方しないか。ごめん。 野営の時は兵士達とよくやるから、つい癖で……」

気遣ってくれる彼の優しさに、私は……

〇〇「……私も、食べてみてもいいでしょうか?」

兵士の人達と果実を食べる彼の姿を想像した私は、自然と口を開いていた。

プリトヴェン「! ……もちろん!」

プリトヴェンさんが差し出してくれたリンゴをかじってみると、爽やかな酸味と甘さが口の中に広がって、幸せな気持ちになる。

〇〇「すごくおいしいです」

プリトヴェン「! ……ああ、ならよかった」

自然と顔をほころばせると、彼も柔らかな笑顔を浮かべた。

プリトヴェン「……久しぶりだな、こういうの。平和っていうか……のどかで」

(プリトヴェンさんは、いつも国を守るために気を張っているから……)

二人で過ごす時間の大切さを感じるからこそ、彼のことをもっと知りたくなる。

〇〇「プリトヴェンさんが遠征に行っている時のこと、もっと教えてくれませんか?」

プリトヴェン「そうだな……この前現れたモンスターは…-」

紡がれる彼の言葉に耳を傾けて、穏やかに流れる時に身を任せた…-。

……

夕暮れの森を進んだ私達は、見つけた小屋へと足を踏み入れた。

プリトヴェン「空き家……みたいだな」

小屋には布がかけられた大きな鏡台、小さなベッドにテーブルが置いてある。

うっすらとほこりを被った家財道具は、長い間使われていないようだった。

プリトヴェン「よかった。君に野宿なんてさせたくなかったから」

安堵の表情を浮かべると、彼は部屋の中を簡単に見て回る。

(変だな……初めてきた場所のはずなのに)

持って来たリンゴをテーブルの上の籠に入れながら、私は不思議と居心地の良さを感じていた…-。

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