爽やかな緑の香りをまとった風が、私の頬をそっと撫でる…-。
(あれ……?)
??「……気がついた?」
真下から聞こえた声に視線を落とすと……
〇〇「プリトヴェンさん!?」
頬を赤らめたプリトヴェンさんが、困ったように私を見上げていた。
〇〇「す、すみません……!」
彼を下敷きにしてしまっていることに気がついた私は、跳ね上がる心臓に足をもつれさせながら、急いで彼の上から離れる。
プリトヴェン「い、いや、大丈夫! 怪我はないみたいだね、よかったよ」
小さく息を吐いたプリトヴェンさんは、ぎこちなく言葉を紡ぎながら立ち上がる。
〇〇「プリトヴェンさんは大丈夫ですか?」
プリトヴェン「ああ、怪我はないよ。ただちょっと……」
彼は瞳を伏せると胸に手をあてた。
〇〇「重かったですよね、ごめんなさい」
プリトヴェン「ち……、違うんだ、その……ちょっとドキドキして」
〇〇「あ……」
プリトヴェン「……」
戻された視線がぶつかり、気恥ずかしさで私も頬が熱くなってしまう。
〇〇「あのっ……ここは、本当に絵本の中なんでしょうか?」
プリトヴェン「たぶんね。匂いも音も、現実の世界と変わりないように思えるけど……」
気恥ずかしさを誤魔化す様に話題を変えれば、プリトヴェンさんも周囲に目を配る。
虹の国を訪れていた私達は、ゴーシュくんにある頼まれごとをされていた。
(収穫祭を盛り上げるために絵本の結末を改変して、だなんて……)
プリトヴェン「子ども達を楽しませるって言ってたけど、ゴーシュ王子もすごいこと考えるよね」
〇〇「そうですね、本当に」
(絵本を完成させれば出られるって、ゴーシュくんは言ってたけど)
(……そもそも、ここはどんな絵本の中なんだろう?)
深い森を見渡して考えていると……
プリトヴェン「……俺から離れないで」
私をかばうように前に出た彼は、木々の向こうへと視線を向けた…-。
第2話>>