第4話 変わりゆく物語

ドロワットさんが、天にかざした指を鳴らした瞬間…-。

兵士1「うわっ! な、なん…-」

兵士達が手にしていた武器が、たちまち小さなカエルへと変わってしまう。

ドロワット「……次は、お前らをカエルにしちまおうか?」

ドロワットさんの言葉に、兵士達の顔から血の気が引いていく。

兵士2「……っ! 退け! 城に戻り、体勢を立て直すぞ!」

兵士達は青ざめた表情で、慌ただしく立ち去って行った。

ドロワット「ふん……口ほどにもねぇ奴らだ」

余裕たっぷりに肩をすくめるドロワットさんに、私は……

〇〇「ありがとうございます」

ドロワット「これくらい、礼を言われるほどのことじゃねぇよ」

ドロワットさんはいたずらっぽい笑みを浮かべて、私の顔を覗き込む。

ドロワット「でも、お前のそういう顔を見んのは悪くねぇ」

〇〇「……っ」

ドロワットさんが私の頬をそっと撫でた、その時……

街の人1「魔法で兵士を追い払ってしまうなんて、すごいなぁ!」

街の人達が集まって来て、ドロワットさんに声をかけてくる。

ドロワット「……別に、褒められるようなことでもねぇだろ。 それより、さっきの兵士達はなんだ? こいつを無理やり連れて行こうとしやがって」

ドロワットさんが尋ねると、街の人達の表情がいっせいに強張ってしまう。

街の人2「大きな声では言えませんが……この国の王子は、ひどい暴君なんです」

街の人3「今夜も、街中の若い女性を残らず妃候補として舞踏会に集めていて……」

ドロワット「暴君……?」

ドロワットさんは戸惑ったように表情を曇らせ、私の耳にそっと顔を寄せた。

ドロワット「『ガラスの靴』ってそんな話だったか? 物語に出てくる王子は、いい奴だった気がするんだけどな」

〇〇「私が知っている物語とも違うみたいです……」

ドロワット「こりゃ、ひょっとすると……。 俺やゴーシュの魔法が干渉して、物語の筋書きが妙な具合に変わっちまったのかもしれねぇな」

ドロワットさんは複雑そうに、軽くため息を吐く。

カボチャの馬車に乗せられていった女性達の悲しげな横顔が、ふと頭をよぎった。

〇〇「街の人達を、助けてあげることはできないでしょうか。 私がこの物語の主人公なら、何かできることがあるかもしれませんし……」

ドロワット「……お前なら、そう言うと思ったぜ」

ドロワットさんはふっと目を細め、その場から踵を返して歩き出す。

〇〇「ドロワットさん、どこへ?」

ドロワット「決まってるだろ? やりたい放題の王子様をこらしめに行くんだよ」

ドロワットさんが私に向かって手を差し出す。

ドロワット「絶対に、俺から離れるなよ」

〇〇「はい……!」

差し出された手を握り返すと、指先が硬く絡まった。

手のひらに感じる温もりを頼もしく思いながら、私は彼と歩き出したのだった…-。

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