第4話 許されない存在

いたずらウサギのパーティが始まるまで、あと数時間……

私は、最終準備を進める彼らの手伝いを申し出た。

〇〇「この卵は向こうに並べばいいですか?」

モルタ「はい」

卵の入った籠を手に取る私に、モルタさんが穏やかな笑みを向ける。

モルタ「手を貸してくださって、ありがとうございます」

〇〇「そんな…-」

返事をしようとした、その瞬間…-。

男の子1「ぴょんっ!」

男の子2「ぴょーん!」

〇〇「っ……!」

突然、ウサギのかぶり物をした子ども達が現れて、卵の飾りが入った籠に、真綿の雪を降らせた。

モルタ「おや……いたずらされてしまいましたね。いたずらウサギの真似でしょうか」

かわいらしいいたずらを見て、モルタさんは口元に笑みを浮かべているものの……

その瞳は、少しも楽しそうに見えない。

(子ども達はこんなに楽しそうなのに……モルタさんは、楽しみじゃないのかな?)

(皆のお世話もしないといけないし、忙しくてそれどころじゃないとか……?)

考えていると、モルタさんが立ち上がり、私の持つ籠を手に取った。

モルタ「向こうで別の作業をしている子ども達もいるんですよ。よければご案内します」

どこか淡々と言って、モルタさんはそのまま歩き出そうとする。

〇〇「モルタさん、待ってください」

私は思わず彼を呼び止めていた。

モルタ「……どうされました?」

モルタさんは立ち止まり振り返ると、不思議そうに小首を傾げた。

モルタ「何かまだ、気になることがあるのですか?」

モルタさんは、まるでこの国の子どもへ接するように、きちんと私に向き直り、穏やかな笑みを見せる。

〇〇「モルタさんは、今……」

(このままじゃなんだか……良くない気がする)

心を決めて、モルタさんの瞳をしっかりと見つめた。

深紅の瞳の奥は、やはり悲しげに渇いているように感じられる。

〇〇「今、楽しいですか?」

モルタ「え……?」

〇〇「モルタさんにも、もっとパーティを楽しんでほしいんです。 せっかくこれだけ、皆が楽しみにしているものだから……。 私は……」

長い沈黙が、私達の間に横たわる。

やがてモルタさんは、少しだけ感情のこもった声で口を開いた。

モルタ「……考えてしまうんです。毎年行われるこのパーティ……。 一生懸命背伸びをして飾りつけしていた子どもが、はしごを使わなくなり……。 寝る前に必ず絵本を読んでほしいとせがんでいた子どもは、いつしか読み聞かせる側になって……」

モルタさんの声からは、悲しみと迷いがにじんでいるようで……

モルタ「私達は子どものまま。体が大きくなってもヒヨコでいることはできる……けれど…-」

そこでいったん言葉を詰まらせ、モルタさんは私の視線から逃れるようにうつむいた。

〇〇「モルタさん……」

この大人の許されない国で、彼がどんな思いで子ども達と過ごしているかを考えると、胸が軋む。

〇〇「ごめんなさい。苦しませたくて言ったわけじゃないんです」

モルタ「ええ。わかっています……」

〇〇「……今は、ただ何も考えないで、純粋にパーティを楽しんでみませんか? 今だけは、その辛い気持ちから解放されて……」

モルタ「え……?」

モルタさんの瞳が、大きく揺らいだ…-。

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