街はとても賑わっていて、子ども達は以前訪れた時よりも楽しげに目を輝かせているように見えた。
〇〇「すごくかわいらしく飾りつけられてますね」
モルタ「ええ、全部、『いたずらウサギのパーティ』のためのものです」
〇〇「ウェルガーくんから招待状をもらいましたが……どんなパーティなんですか?」
モルタさんは目元を細め、くすりと笑った。
モルタ「とても楽しいパーティですよ」
穏やかな笑みに心をくすぐられて、私の胸もわくわくと騒ぎ出す。
モルタ「私達が幼い頃から読んでいる絵本があるのですが……その絵本の名前を、そのままもらっているのです」
〇〇「絵本……?」
私が首を傾げると、モルタさんは静かに口を開き語り始める。
モルタ「昔々……皆に、いたずらばかりするウサギがいました。 ある日、ウサギは心優しいおばあさんにいたずらをしました。 けれど、そんなウサギにもおばあさんは優しくて……二人は仲良しになったのです」
どこか魅惑的に語る彼に引き込まれるように、私はじっと耳を傾けていた。
モルタ「けれど……意地悪な地主は、いたずらばかりするウサギを殺そうと考えたのです」
〇〇「……ウサギは、無事だったんですか?」
モルタ「ええ、大丈夫です。ウサギを殺そうと地主が森へ向かう途中……。 ウサギが前に掘った落とし穴に落ちてしまい、ウサギの元にたどり着けなかったのです」
〇〇「じゃあ、おばあさんとウサギはずっと友達でいられたんですね」
思わず声に出してしまうと…-。
モルタ「ふふ、そうです」
楽しげに笑う彼がなんだか珍しくて、心がふっと軽くなる。
モルタ「どうしましたか?」
〇〇「いえ。つい、引き込まれてしまって」
モルタ「そうですか……語り手としては、嬉しいものです」
モルタさんは、笑みを絶やさないままそう言ってくれた。
そのまま、遠くを見るように彼が目を細める。
モルタ「昔……弟達も、私の話を楽しそうに聞いていたことを思い出しました。 ちょうど、今のあなたのように……」
〇〇「モルタさん……?」
モルタ「私達は、ずっと子どもなのに……人はどうして変わっていってしまうものなのでしょうね」
〇〇「え……?」
悲しげにつぶやかれた言葉の真意を知りたくて、思わず聞き返したけれど……
モルタ「いいえ、なんでもありません……行きましょうか」
モルタさんは穏やかな笑みを浮かべながら、ゆっくりと首を横に振る。
けれど……仮面の下からは、悲しみがにじみ出ているように感じられたのだった…-。