オリオン「……聞かせてくれ」
静かな声が穏やかに、けれど拒めない強さで私を促す。
(オリオンさんを……どう思うか)
オリオンさんの顔を見つめたまま、胸は高鳴っていくばかりで……
オリオン「○○……」
(私は……)
今までに見てきた、オリオンさんの表情が鮮やかに蘇ってくる。
オリオン「何を期待しているんだ?」
そして、今回知った彼の新しい一面……
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オリオン「広い海の真ん中で見上げる星空は、美しいぞ」
オリオン「こんな話……誰かに話すのは初めてだ」
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出会ってからいつの間にか、自分の心がこんなにもオリオンさんで占められていることを自覚する。
○○「……好きです」
頬が熱くなるのを自覚しながら、私はその一言を口にした。
(言ってしまった……)
思わず外してしまった視線を、恐る恐る彼へと向け直すと…―。
オリオン「……」
今まで見たこともないほどの優しい笑みが私を待っていた。
○○「っ……!」
愛おしさが込められた眼差しに、胸が狂おしいほど締めつけられる。
(そんなふうに笑われると……)
何も言えない私に、オリオンさんは言葉を強要することはしなかった。
オリオン「ここにいると……不思議と、穏やかな気持ちになる」
○○「そう……ですね……」
オリオン「靴を脱げ」
○○「え……?」
唐突に言われ首を傾げながらも、オリオンさんに言われた通りに靴を脱ぎ、砂浜に足を下ろした。
肩を抱かれ、私達は砂浜に打ち寄せる白波に足をつける。
(どうしてこんなに……胸が締めつけられるんだろう)
オリオン「……アクアリアの最初の王が生まれた場所か」
ふと、その言葉に合点がいく。
○○「だからでしょうか」
オリオン「……?」
○○「この島にいると、なぜかオリオンさんを感じられる気がします」
その言葉に、彼は少しムッとしたような顔をして……
オリオン「ふん。俺はこうしてお前の傍にいるだろう?」
肩を抱く腕に力が入り、彼の温かさをより一層感じる。
○○「そうなんですが……」
流れる髪を掻き上げ、オリオンさんは打ち寄せる波を見つめた。
陽の光が、彼の瞳を宝石のように輝かせる。
オリオン「……幼い頃はコライユのように、シエルマーリンに行ってみたいと思っていた」
○○「オリオンさんの子どもの頃?」
オリオン「誰にだって子どもの頃はあるだろう?」
つい漏れた私の問いかけに、オリオンさんがわずかに片眉を持ち上げた。
○○「あまり想像がつかなくて……」
オリオン「今とそれほど変わらない。 変わったと言えば……愛する女を見つけたこと……ぐらいか?」
仕返しとばかりにくすりと笑い、オリオンさんは私から離れた。
○○「……」
(でも……今日は、今まで知らなかったオリオンさんがいっぱい見られた)
彼との距離感に幸せを覚え、私はそれを噛みしめるように目を閉じる。
オリオン「俺の手を取れ」
再び差し出された手に、迷いなく手を重ねた。
オリオン「……シエルマーリンには神殿があると聞いたことがあってな。 行くぞ」
握る手に力を込めて、彼は私の手を引く。
打ち寄せる波が、足元の砂をゆっくりとさらっていった…―。