第3話 永遠のような場所

白い雲が、緩やかに空と海の間を流れていく…―。

オリオン「そんなに大きな島ではなさそうだ。少し歩いてみるか」

口元に笑みを浮かべ、オリオンさんは私に手を差し出す。

○○「え……?」

オリオン「どうした?行かないのか?」

○○「い、いえ……」

わずかに跳ね上がる眉を見て、私は慌てて手を重ねた。

気遣うように優しく手を引いてくれる彼に、胸が甘い音を刻み始める。

(やっぱり……いつものオリオンさんと違うような。 いつもだったら……勝手に手を掴んだり……その…―)

つい浮かんだ想像を頭の隅に追いやり、私の手を引く彼を見上げる。

その視線さえ予想していたのか、オリオンさんが面白そうに口元を歪めた。

オリオン「何を期待しているんだ?」

からかうような眼差しから逃れようと視線を逸らした私は…―。

○○「期待なんて……」

オリオン「ふっ……お前の顔は正直だな。その期待に応えてやらなくもないが?」

○○「っ……!」

とっさに手を離そうとするけれど、結局彼の手に捕まってしまう。

オリオン「ああ、そのくらい威勢がいい方がお前らしい」

絡め取られる指先に、そっと彼の口づけが落とされる。

オリオン「まあ今は、ここまでにしておくか」

意地悪く笑うその表情に、私は結局翻弄されてしまうのだった…―。

……

島の内部へ足を一歩踏み入れただけで、景色は深い緑に包まれた。

木々に覆われた森は神秘的な静けさに包まれ、光の尾を引くように何かが舞っている。

オリオン「ほう……」

木々を見上げ、オリオンさんが感心したように声を上げた。

○○「どうしたんですか?」

オリオン「この辺りにある植物は、アンキュラの地にも生えていない。 地上では、絶滅してしまった植物だ」

○○「そうなんですね……」

尾を引く光へと視線を向けると…―。

高い木々の枝から蔦が垂れ下がり、淡く光る紫色の花をつけていた。

(まるで……時が止まっているみたい)

ざわめく木々の音を聞きながら、ふと心の中でつぶやくと…―。

オリオン「ここは時を止めたままなのかもしれない」

思っていたことと同じ言葉が聞こえ、私ははっとオリオンさんを見つめる。

オリオン「何かあったのか?」

○○「その……。 心を読まれたのかと思って……」

オリオン「読めるのなら、こんなにも苦労はしていない」

顎を取られ、オリオンさんの顔が近づく。

○○「っ……!」

オリオン「お前の反応は、いつ見てもかわいらしいな」

何を言われるのだろうと思いながら、オリオンさんの瞳を見つめ返すと…―。

思いがけず、静かで優しい眼差しが返ってきた。

オリオン「時を止めた場所か……。 俺達もこのまま、ここで悠久の時を二人きりで過ごすか?」

柔らかな声色で問われて、私の胸が早鐘を打つ。

○○「あの……」

オリオン「……どうした?」

○○「いえ……素敵だなって思って」

すると、オリオンさんはわずかに目を見開いて……

オリオン「どうした。随分と素直だな」

満足したように、私の頬を指で撫でた。

オリオン「かわいい奴だ……」

(オリオンさんが楽しそうで……ちょっとだけ優しい。 ここに来てよかった)

触れる手の優しさを感じながら、少しずつ募っていく想いを自覚する。

(それに、オリオンさんのことをもっと知ることができて……嬉しいな)

ざわめく木々が、まるで自分の心を表しているかのように大きく揺れていた…―。

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