第2話 王子の笑顔

ティーガ君に連れられて、私は城や街を一望できるという、鮮やかな緑の広がる草原へとやって来た。

(綺麗な緑……空気が気持ちいい)

ティーガ「城へ帰るまでに、ちょっと寄り道だ。 ほら、来いよ」

ティーガ君はひらりと馬を降り、馬上の私に両手を差し出してくれる。

〇〇「あ、ありがとう」

ためらいながらも両手を掴むと、強く引き寄せられて…-。

〇〇「……っ」

気がつくと私は、彼の腕にしっかりと抱きとめられていた。

〇〇「ご、ごめん……っ」

そんな私に、ティーガ君が笑いかけてくれた。

ティーガ「よし、少し休憩だ。 ありがとな、ブラン」

真っ白な馬の背を、軽く叩くように撫でて微笑みかける。

その笑顔がとても優しくて、心が温かくなった。

ティーガ「オマエも撫でてみるか?」

〇〇「……え!?」

ティーガ君の言葉に反応したのか、馬が私に顔を向けてきた。

ティーガ「ほら、コイツも待ってるぞ」

〇〇「う、うん」

恐る恐る馬の背に手をやると、気持ち良さそうに目を細めている。

(かわいい)

ティーガ「どうやら、コイツもオマエを気に入ったみたいだ」

〇〇「そうだといいな」

ティーガ「そうだ、オマエ一人で乗ってみるか?」

〇〇「え? 私が?」

ティーガ「大丈夫、オレが教えてやるよ」

〇〇「うん、乗ってみようかな」

ティーガ「よし!」

ティーガ君の言葉に背中を押され、私は一人で馬に乗ることになった。

(どうしよう、緊張する)

ティーガ「ほら、手を貸せ」

ティーガ君に支えられながら、なんとか馬上に跨り、恐る恐る手綱を持つと…-。

ティーガ「じゃ、歩くぞ」

手綱の端をティーガ君が握り、馬を先導してくれる。

少しすると、馬の軽快な足取りに、だんだんと楽しくなってきた。

(風がとっても気持ちいい……楽しいな)

ティーガ「どうだ?楽しいだろ?」

〇〇「うん!」

ティーガ「じゃ、行くぞ」

〇〇「え?」

すると突然、ティーガ君が手綱を離してその場に立ち止まった。

〇〇「ティ、ティーガ君!?」

突然に手綱を任せられ、呆然となってしまう。

〇〇「ど……どうしたらいいの!!」

馬は相変わらずゆっくりとした歩調だけど、私は慌てふためくことしかできない。

ティーガ「手綱をしっかり持って背筋を伸ばせ」

隣を一緒に歩きながら、ティーガ君が私に声をかけてくれるけど……

理解はできても、体は全く言うことを聞いてくれない。

(怖い……!)

馬の背に伏せた拍子に、脇腹を蹴ってしまった。

ティーガ「馬鹿……!」

それを合図と思ったのか、馬は風を切って走り始める。

(振り落とされる……!?)

馬にしがみつきながら、恐怖で頭が真っ白になった時…-。

ティーガ君の指笛が草原に響き渡った。

〇〇「……?」

馬がゆっくりと速度を落とし、ティーガ君の元へと駆けていく。

(よ、よかった)

ティーガ君の元に無事に到着すると、無邪気な笑顔を向けられた。

ティーガ「大丈夫だったか?」

上手く返事ができず、ティーガ君の手を借り、逃げるように馬から降りる。

ティーガ「横腹を蹴るのは、走る合図なんだ。説明してなくて悪かったな。 でも、気持ち良かっただろ?」

〇〇「こ、怖かったよ……!」

ティーガ「ははっ! いきなり走り出した時はびっくりしたぞ」

ティーガ君は馬を撫でながら、太陽のような笑顔を私に向ける。

ティーガ「また、乗り方教えてやるよ!」

(そんな顔されたら、怒れないよ)

先ほどの怖さからなのか、それともティーガ君の笑顔のせいなのか…-。

私の心臓は、うるさいくらいに音を立てていた…-。

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