第4話 不思議な高鳴り

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ティンプラ『ですが……この特殊な空間の中では、ボクとキミは普通の恋人同士に見える』

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ティンプラ「そのことを知った瞬間、胸の奥が熱くなって……」

顔を赤らめながら、珍しく戸惑うような素振りを見せるティンプラさんを見ていると、少し申し訳ない気持ちを覚えながらも嬉しくなってしまう。

〇〇「私もです。 あの人達にカップルだって言われた時、すごくドキドキしました」

ティンプラ「キミも?」

心のままに伝えると、ティンプラさんは澄んだ瞳の色を見開いた。

そして……

ティンプラ「再び、エラー発生」

〇〇「えっ?」

ティンプラ「キミの言葉を聞いて、その笑顔を見た瞬間……この奥で予期せぬ挙動が起こりました」

ハートのプリズムに手を置いたまま、ティンプラさんは淡々と語る。

けれど、それも束の間……

ティンプラ「……前言撤回。やはり、これはエラーではありません。 この高鳴りをエラーとは言いたくない。なぜかボクは、そう思っています」

〇〇「ティンプラさん……」

私達はしばらくの間、二人で見つめ合う。

そんな私達の元に、たくさんのワイングラスが乗ったトレーを持つ給仕さんがやって来た。

給仕「こちらをどうぞ」

給仕さんが、私に赤ワインを差し出す。

〇〇「ありがとうございます」

私は美しいルビー色の液体が揺れるグラスを、そっと手に取った。

すると、次の瞬間……

〇〇「……!」

ポン! という音や煙と共に、ワインが深紅の薔薇に変わる。

すると周りにいた人々から笑い声が上がり、私はようやくそれが給仕さんによるいたずらだと理解した。

カボチャの置物達「ひっかかった! ひっかかった!」

飾られているカボチャの置物達ですら、ケタケタと楽しそうに笑っている。

〇〇「やられちゃいました」

驚かされてしまった自分に思わず笑ってしまうと、ティンプラさんも小さく笑みをこぼし……

ティンプラ「素敵な笑顔です。 この時間を、とても楽しんでいると伝わってくる。 だから、ボクも……」

そこまで言うと、彼は言葉を止めた。

(ボクも……なんだろう?)

次の言葉を待つものの、ティンプラさんは遠くを見つめたまま微動だにしない。

その様子を見守っていると……

ティンプラ「やはり、なんでもありません。 それより向こうのテーブルに行ってみましょう。面白そうなゲームが、たくさんあるみたいです」

ティンプラさんは私の手を取り、チェスやカードゲームなどが置かれたテーブルに向かう。

彼の手が触れたことで、私の鼓動は再び高鳴り……

〇〇「……」

私は言葉を口にすることなく、ティンプラさんの手を握り返す。

ティンプラ「〇〇の手は……温かいですね」

(ティンプラさん……)

ダンスを踊る焼き菓子や、ひとりでにお酒を注ぐワインボトルなど、辺りには相変わらず不思議な光景が広がっている。

(だけど、一番不思議なのは……)

不思議に満ちたワンダーメアで過ごしているうちに、驚くほど大きくなった彼への想いを、私は人知れず自覚していたのだった…-。

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