第3話 贈り物の交換

街に出たヴァスティさんと私は、雑貨屋さんに立ち寄っていた。

芯のないろうそくや、短針しかない時計など、使い方もわからない雑貨が並ぶ棚に目を向けると……

その中の一つ、葉のような装飾があしらわれた銀色のブレスレットが目に留まる。

(なんだろう……不思議な感じがする)

近づいてみると、そのブレスレットはまるで光を発するかのように、神秘的な雰囲気を持っている。

ヴァスティ「お前はそういう細やかな装飾が好きなのか?」

〇〇「そうですね……綺麗だと思います」

ブレスレットを手に取るヴァスティさんと視線がぶつかると、彼の瞳が柔らかく細められた。

ヴァスティ「俺にはお前の好みを把握しておく必要がある。 お前は俺のものだからな」

(私は、ヴァスティさんのもの……)

普段から彼に言われている言葉でも、胸が温かくなるのは止めようもなくて…-。

ヴァスティさんは店主さんを呼び、短く会話を交わすと、あっという間にブレスレットを購入してしまう。

ヴァスティ「〇〇」

不意に手首を掴まれたかと思うと、ぐいと持ち上げられる。

〇〇「あ、あの……?」

ヴァスティ「じっとしていろ。動くと上手くつけることができない」

私の手首を包むヴァスティさんの指から、彼の温もりが伝わってきた。

〇〇「ありがとうございます」

ヴァスティ「きっとお前に似合うだろう」

笑みを含んだ声が、私の耳を柔らかくくすぐる。

手首につけられたブレスレットは、店内の淡い照明を映して鮮やかに光った。

(ヴァスティさんからの贈り物……嬉しい)

何げなく棚に目を戻すと、同じ装飾が施された一回り大きなブレスレットが置かれている。

〇〇「これ……」

ヴァスティ「お揃いのブレスレットか」

〇〇「はい。これは、私がヴァスティさんにつけてみてもいいですか?」

ヴァスティ「……」

思わず手に取ってヴァスティさんを見上げると、彼はわずかに目を見開く。

その瞳が悪戯っぽく輝くと、彼は愉快そうに首を傾げた。

ヴァスティ「恥ずかしがっていたかと思えば、途端に積極的になるんだな。 そんなお前もいいと思うぞ」

〇〇「!」

嬉しそうに目を細めるヴァスティさんに、鼓動が跳ねる。

(恥ずかしい……)

照れくささに顔を上げられないまま、ヴァスティさんの手首に触れた。

ヴァスティ「顔を上げろ、〇〇。お前の恥じらった顔も、もちろん俺のものなのだからな」

〇〇「でも……」

(今、絶対顔が赤くなってるし……)

戸惑う私の視界に、ヴァスティさんの長い指が映る。

ヴァスティ「それとも、俺が上を向かせてやろうか?」

そっと顔を上げれば、ヴァスティさんが愉しげに私を見つめていた。

その表情に、鼓動がいっそう速くなってしまう。

ヴァスティ「悪くないな。買っていこう」

彼は私が手首につけたブレスレットに目を落とすと、満足げに頷いてみせた。

〇〇「あ、あのっ……!」

再び店主さんを呼ぼうとするヴァスティさんの腕を、とっさに掴む。

ヴァスティ「どうした?」

〇〇「……せっかくなので、これは私からの贈り物にさせてくれませんか?」

ヴァスティ「……」

ヴァスティさんの瞳がわずかに揺らぐ。

ヴァスティ「俺のものであるお前が、そんなことをする必要はない」

〇〇「それは…-」

(出すぎたことだったかな……)

不安を募らせる私の頬を、彼の手のひらがふわりと包み込んだ。

ヴァスティ「そんな顔をするな、〇〇」

〇〇「……っ」

困ったように眉を下げる彼の表情に、胸が詰まった。

ヴァスティ「本来は、俺がお前に与えるのが筋なのだが……。 お前がそうしたいというのなら、俺も喜んで受け取ろう」

〇〇「! いいんですか?」

ヴァスティ「ああ。お前の望みは全て叶えてやりたいからな」

(……嬉しい)

私達の手首につけられたブレスレットが、照明の光を受けて銀色に輝く。

店内のざわめきが、どこか遠くに聞こえた…-。

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