サイさん宛に届いたたくさんの依頼を解決するため、私は彼にお手伝いを申し出た。
〇〇「宝石の見立てから、ちょっとした相談事まで……本当にたくさん依頼があるんですね」
サイ「びっくりだよね。まさか本当に依頼が来るなんて、思ってなかったな」
依頼書に目を通しながら、サイさんは穏やかに話してくれる。
〇〇「そうなんですか?」
サイ「うん。僕達に直接依頼って、しづらいんじゃないかなって」
(確かに……王子様に直接お願いするのは、ちょっと恐れ多いかも)
サイ「だから、こんなにもたくさんの反響があって驚いてるんだよ」
サイさんはなおしばらく、不思議そうに考え込んでいたけれど……
サイ「でも、皆がこうして受け入れてくれるのは……ティーガの人徳なのかもね」
やがて納得したように、綺麗な瞳をわずかに細めた。
〇〇「王子様が3人もいて助けてくれるなんて、ありがたいことだと思います」
サイ「そっか。 なら、皆の期待に応えるために、もっといろんな人の話をちゃんと聞かないといけないね」
山のように届いている依頼書を、サイさんは見事な手際で分別し始めた。
あっという間に書類はまとまり、乱雑だった部屋が綺麗になっていく。
サイ「調査が必要そうなものは……ティーガとリドにも振り分けて、手伝ってもらおうかな。 ふふ。『お母さんのおたんじょうびにびっくりさせたい』って……かわいい依頼だね」
(たくさんあるのに、ひとつひとつ丁寧に確認してる)
感心してサイさんを見つめていると、彼は少し恥ずかしそうに微笑んだ。
サイ「……事務的で探偵っぽくないかな」
ふっと、流れるような視線を向けられドキリとしてしまう。
〇〇「いえ。こうして皆の声を王子様が聞いてくれるなんて、素敵なことだと思います」
心からそう言うと、サイさんは嬉しそうに目を細めたのだった…-。
…
……
サイさんに届いた依頼のうち、街の人のものを解決するために、私達は事務所を後にした。
サイ「〇〇まで付き合わせちゃって、ごめんね」
申し訳なさそうに眉を下げるサイさんに、私は笑いかける。
〇〇「いえ、私にできることがあれば手伝わせてください」
サイ「すごくありがたいよ。正直、僕一人でこの量は無理だなあって困ってたんだ」
(少しでも彼の力になれるように、私も頑張ろう)
サイ「じゃあさっそく、この依頼書を見てくれる?」
サイさんは私の方にそっと身を寄せて、依頼書を見せてくれた。
サイ「依頼といっても……探偵というか、王子へのお願いみたいなものが多いんだけど」
(……そうなっちゃうのは、ちょっとわかる気がする)
サイ「でも、これは探偵としての依頼になるかな」
依頼書に書かれている内容を見て、私は思わず頬を緩めてしまった。
〇〇「微笑ましい依頼ですね」
サイ「僕に解決できるかな……」
サイさんは少し心配そうに、依頼書を見つめていたのだった…-。