宝石の国・ガルティナ 彩の月…-。
(探偵団……か)
この国の王子であるティーガ君を中心に、『ティーガ探偵団』なるものが結成されたと聞いた私は、彼らの様子を見るため、ここ宝石の国を訪れていた。
(王子様の探偵団……最初は驚いたけど)
なんともティーガ君らしいと思いながら、事務所になっている城の一室の扉を叩くと……
サイ「ようこそ、〇〇」
柔らかな声で迎えてくれたのは、同じく宝石の国・サフィニアの王子、サイさんだった。
〇〇「こんにちは、サイさん」
格子柄の中折れ帽に、襟の高い上品なロングコート……
サイさんは、いかにも探偵といった装いをしていた。
(すごく……似合ってる)
サイ「はは……そんなに見られると、恥ずかしいな」
〇〇「す、すみません!」
思わず見つめてしまっていたことに気づき、さっと視線を逸らす。
改めて事務所の様子を見渡すと……
〇〇「これは……すごい状況ですね」
部屋は書類で溢れ返っていて、城の一室とは思えないほどに散らかっている。
目を丸くする私を見て、サイさんが困ったように眉尻を下げた。
サイ「全部、僕達への依頼書なんだ」
〇〇「ティーガ君と、リドは?」
サイ「あはは……リドは行方不明のペットの捜索で、ティーガは大事件を求めてどこかへ行っちゃったみたい」
〇〇「そ、そうだったんですね……サイさんは何をしていたんですか?」
サイ「あぁ、書類の整理をしていたんだ。なんだかたくさん溜まっちゃってて」
机に積まれている山盛りの書類に視線を移すと、ふとあることに気がついた。
〇〇「……サイさん宛の手紙が随分多いんですね」
サイ「うん。頼られるのはありがたいんだけど、いつの間にかすごい量になっちゃったんだ。 なんで僕宛のものが多いのかは、わからないんだけど」
そう言って、サイさんは不思議そうに首を傾げる。
〇〇「でも……サイさんに頼むと安心できるのは、わかる気がします」
サイ「そうかな?」
〇〇「はい」
深く頷くと、サイさんはやっぱり困ったように笑うのだった…-。