翌朝…-。
宝石泥棒を見つけるべく、私とリドは手分けして聞き込みをすることにした。
…
男性「すみませんが、これといって思い当たることは……」
リド「そっか。ありがとな!」
女の子「リドさま、この間はありがとう!」
リド「おう、もう風船なくすんじゃねえぞ?」
女の子「うん! お礼にいいこと教えてあげるね!」
リド「いいこと?」
女の子「あのね! さっき、大きな猫さんがいたの!」
リド「猫?」
女の子「うん! 大きな猫さん!」
リド「それって……こーんなでっぷりしてて、茶色くて目つきが悪くて、ちょっと凶暴な奴か?」
女の子「うん! こーんなでっぷりしてる! さわろうとすると引っかかれちゃうんだって!」
リド「あいつに間違いなさそうだな……」
女の子「かわいいよ! 赤いリボンをしてたの!」
リド「赤いリボン?」
女性「そうですねえ……変わったことは特に…-。 強いて言えば、最近大きな猫を見かけるくらいですかねえ」
リド「また猫か……」
女性「面白い猫なんですよ。お気に入りの散歩コースがあるみたいで、毎日決まった道を歩いているんです」
リド「へえ……」
…
従者「すみません。どこを捜索しても手がかりがなくて……」
〇〇「そうですか……」
従者「今回の件で城の出入りも制限されて……いろいろ大変でして。 ……おや?」
猫「なー」
(あれ? あの猫、昨日街で会った……)
(なんだろう、何か違和感がある……あの子、あんな感じだったかな)
従者「そういえば……最近、城であの猫をよく見かけますね」
…
……
高く昇っていた太陽が沈みかける頃…-。
聞き込みを終え、私はリドが待つ部屋へと戻った。
リド「ったく、うるせえよ。こっちは今それどころじゃねえんだって!」
部屋の扉を開けると、リドが誰かと電話をしていた。
リド「そもそもティーガの方はどうなんだよ? ……ま、そんなことだろうと思ったぜ」
聞こえてくる会話から、電話の相手がガルティナの王子、ティーガ君であることがうかがえる。
リド「じゃあな、ちゃんとやれよ」
リドが電話を切ったことを確認して、私は声をかけた。
〇〇「ティーガ君? 仲が良いね」
リド「まあ……やっぱ、なんだかんだ一緒にいて楽しいからな。 それより、どうだった?」
〇〇「うーん……」
(あんまり役に立ちそうな情報じゃないけど……)
私はリドに聞き込みで得た情報を伝えていく。
〇〇「あっ、そういえば……リドを引っ掻いたあの猫、最近お城でよく見かけるみたいだよ」
リド「へえ、城で……って」
リドが何かに気づいたかのように、大きく目を見開く。
リド「……そうか。 そうかもしれねえな……!」
突然、リドは勢いよく私の手を握りしめる。
〇〇「えっ、リ、リド……!?」
間近できらきらと輝く瞳に見つめられ、胸が早鐘を打つ。
リド「やっぱ、あんたすげーよ!」
〇〇「……え?」
リド「わかったかもしれねえ! ……まだ確証はねえけど」
〇〇「わかったって……犯人が?」
リド「ああ。ついてきな」
リドはくるりと背を向け、扉の方へと歩き出す。
(いったい、どういうこと……?)
訳もわからないまま、私は彼の背中を追いかけた…-。