宝石の国・オリブレイト 彩の月…-。
澄んだ青空に白い鳥が飛んでいる。
平和で穏やかな宝石の国に、とある探偵団が発足したと聞いて、私はこの国を訪れていた。
(『ティーガ探偵団』……)
リドからの手紙によると、どうやらティーガ君の思いつきで結成されたらしい……
なんとなく少し不安を覚えながらも、私は事務所の分室になっているというオリブレイトの城の一室へと向かった。
…
……
部屋の扉を開け、私は思わず目を見張った。
(これは……)
部屋のあちこちに、手紙や書類が雑然と積み上げられている。
さらにはルーペやパイプなど、いかにもそれらしい物も置いてあって……
リド「けっこう本格的だろ? ま、パイプなんて使わねえんだけど」
声がした方を見ると、困ったように笑うリドの姿があった。
リド「よく来てくれたな、〇〇!」
ハンチング帽に、かっちりと締めたネクタイ……そして上品なコートを身に着けたリドは、まさに『探偵』らしい雰囲気をまとっていた。
〇〇「リド、その格好……」
リド「あ……それ以上は言わないでくれ! 恥ずかしいから」
リドはさっと、机の上にあった手紙を手に取りそれに視線を落とす。
(格好いいって思ったんだけど……)
なんだか私まで気恥ずかしくなってしまい、誤魔化すように話題を逸らした。
〇〇「それって、もしかして依頼書?」
リド「ああ」
〇〇「すごいね。こんなにたくさんあるんだ」
リド「いや、それがさあ……」
リドは眉を寄せて、私に依頼書を何通か手渡した。
〇〇「『腰が痛くて、庭の手入れができない』……。 『お人形がなくなっちゃった』……」
(探偵っていうよりは……)
リド「探偵っつーか、街の便利屋さんって感じだよな」
彼はため息をこぼすけれど、決して嫌そうには見えなくて……
リド「ったく。オレ、ティーガに振り回されすぎだよな。 ま……でも、こうして皆の声を聞けるのはいいことだと思うけど」
(すごくリドらしい)
王子として立場があっても、彼は誰からも親しまれている。
〇〇「探偵としてのリドの仕事ぶりを見てみたいな」
リド「あんたなあ……」
胸を弾ませる私に、リドはもう一度ため息を吐いたのだった…-。