第3話 サンプルを探して

翌日、窓からまぶしい朝の光が部屋に射し込む…-。

私は身支度を整えると、約束通りティンプラさんと街に出ることにした。

街はお祭りを控えてか、以前来た時よりもとても賑わっている。

(すごい……虹が架かる空に風船が飛んで、とても綺麗)

(それにやっぱり)

沿道には、さまざまな模様の卵が並べられている。

(卵……なんだ)

きょろきょろと辺りを見回していると……

ティンプラ「ボクの手を掴んでください」

〇〇「え?」

機械で覆われた手が、私に伸ばされる。

(……いいのかな?)

戸惑いながら手を伸ばそうとすると、先に彼が私の手を握りしめた。

〇〇「……っ」

ティンプラ「? 心拍数の急上昇を確認。道すがらはぐれることを危惧しましたが……。 どうしましたか?」

〇〇「あ、いえ……行きましょう」

高鳴る胸元を反対の手で押さえながら、街中へと繰り出した。

大通りの角を曲がると占い師さんが道端に店を出しているのを見つけた。

〇〇「ティンプラさん、あの占い師さんに話を聞いてみたらどうですか?」

ティンプラ「人の話を聞いて未来を占う職業。話術にも長けていると判断。 そこの占い師の方、ボクの話を聞いてくれませんか」

占い師の老婆「どうぞ、そこの椅子におかけください」

淡々とした口調で占い師さんに話しかけて、ティンプラさんは着席した。

……

30分ほど老婆の話を聞いた後、礼をしてその場を離れると、ティンプラさんは軽く頭を左右に振った。

ティンプラ「……わかりません。あの占い師は、何者なのでしょう」

〇〇「え、えっと……」

ティンプラ「ボクとキミの相性は100%だと……何を根拠として導き出しているのか」

(一方的に、相性占いをされただけだったけど)

(少し、嬉しかったなんて言ったら……)

そんなことを考え、一人頬を熱くしていると……

ティンプラ「……どうしましたか?」

〇〇「い、いえ、なんでもありません。それより、何か参考には…-」

ティンプラ「……なりませんでした」

(だよね……)

ティンプラ「けれど……解析不能です。キミは、あの占い師の言葉を聞いて心臓を鳴らせていた。 何か、キミに影響を与えるものがあった。違いますか?」

ティンプラさんが答えを求めるように、私の顔を間近で覗き込んでくる。

〇〇「そ、それは…-!」

慌てて言葉を探すけれど…-。

ティンプラ「……次のサンプルを探しに行きましょうか」

再び、私に向かって彼の手が伸ばされる。

(本当に……わかってないんだよね?)

少し前を歩くティンプラさんの背中からは、やはり何もうかがい知ることができなかった…-。

……

街中を彷徨っていると、広場の一角に人が集まっていた。

〇〇「あれは……?」

人垣の向こうに大道芸人らしき人がジャグリングを披露している姿が見える。

ちょうど一人の観客と言葉を交わしたかと思うと、どっと人々の笑い声が響いた。

ティンプラ「笑いの反応を確認しました。行ってみましょう」

ティンプラさんに手を引かれ、人垣の前に立つ。

ピエロの衣装に身を包んだ大道芸人さんは、細長いバルーンに空気を入れると……

大道芸人「ふっふふー、ここでクイズです! このバルーンは何になるかなー? はい、そこの最前列に座った君! 君が一番手を上げるの早かった!」

最前列の男の子「わんわん! ぼく、わんわんがいい!」

男の子の話を聞いて、大道芸人さんは器用にバルーンを捻って形を作っていく。

30秒ほどでものの見事に風船の犬が出来上がった。

最前列の男の子「わーい! やったぁ!」

その後も大道芸人は、人々の反応を見ながら、軽快なトークで観客を飽きさせなかった。

(すごい……!)

隣にいるティンプラさんを見ると……

ティンプラ「……」

彼は大道芸人さんの話し方や仕草を食い入るように見つめていた。

〇〇「何か掴めそうですか?」

ティンプラ「……わかりません。でも彼を見ていたくなります。どうして彼は観客を惹きつけられるのでしょう?」

〇〇「一生懸命だからでしょうか?」

ティンプラ「理解不能です。一生懸命やることが笑えるのですか?」

〇〇「そうじゃなくて、本気で楽しませようとする気持ちが通じるというか……」

ティンプラ「……」

ティンプラさんは無言のまま私を見つめている。

(なんて言ったらいいんだろう……)

上手く伝えられなくて、もどかしい気持ちを抱えていると……

ティンプラ「〇〇……」

〇〇「え?」

再会して初めて、ティンプラさんの口から私の名前が呼ばれた。

その響きが、妙に私の胸をくすぐって…-。

ティンプラ「ありがとう……ボクもボクなりにもっと分析してみます」

それきり、ティンプラさんは大道芸人のパフォーマンスに夢中になるのだった…-。

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