太陽最終話 蘇る大地、息づくこころ

ザント「俺が目をそらして、遠ざけ続けてきた・・・・・・。 そのせいで、ここは事故が起きた時のまま、時間が止まっていたんだな・・・・・・」

私達は、すっかり荒れ果てていた祠の周りを片付けることにした。

二人で力を合わせて、瓦礫や土砂を取り除いていく・・・-。

・・・

・・・・・・

ようやく辺りが整った頃には、すでに陽が沈もうとしていた・・・-。

ザント「手伝わせてしまったな」

○○「いえ・・・・・・お願いしたのは私ですから。 だけど、やっぱりどこか殺風景ですね」

夕陽に赤く照らされた丘を見て、息をつく。

ザント「昔は・・・・・・ここもいろんな花が咲く綺麗な所だったんだ」

ザントさんはその場にしゃがみ込み、掌で地面へ触れる。

ザント「すっかり疲弊して、大地の力が失われている・・・・・・。 長い間、放っておいたせいだな。精霊の力がこんなに弱まって・・・・・・」

枯れた大地を憂いて、彼は目を伏せる。

○○「ここも中庭や菜園のように、緑が青々と茂るようにはならないんでしょうか?」

ザント「・・・・・・」

目を伏せたまま、ザントさんは大地の声に耳を傾けているようだった。

やがて・・・-。

ザント「・・・・・・まだ、死んだわけじゃない、わずかだが声が聞こえる。 俺の持つ力で・・・・・・」

ザントさんはその場から立ち上がると、大きく息を吸い込んだ。

ザント「やってみる・・・・・・!」

そう言い切った彼の顔は今までとは違い、強い意志の欠片が見えた。

落ち着いた呼吸を続け、ザントさんは目をつむったまま言葉を唱える。

ザント「大地の精霊よ・・・・・・このテラマートルに根ざす大いなる力よ・・・・・・。 一族の主たる我の願いを聞き届けたまえ・・・・・・耳を傾けたまえ・・・・・・。 どうかこの地に今一度、精霊のご加護を・・・-」

ザントさんが手を合わせたその瞬間から、淡い光が漏れ出す。

やがてその光は黄金色に輝き出し、夕闇に染まる丘を強く照らして・・・-。

○○「・・・・・・!」

強い光に、私はまぶたを閉じた。

すると、温かな土の匂いが辺りに溢れ始めて・・・・・・

スチル

○○「こ、これは・・・・・・!?」

目を開いた後に飛び込んできた風景に、私は言葉を失った。

○○「嘘・・・・・・さっきまで何もなかったのに」

ただ寂しいばかりだった風景が、ザントさんの立つ祠周りの一帯だけが・・・・・・

若葉が芽吹き、花が咲き乱れる、そこだけ春が訪れたような幻想的な場所へと変わっていた。

○○「綺麗・・・・・・こんなに美しい所だったんですね」

ザント「ああ・・・・・・」

浅黒く日に焼けた腕を彼が差し出すと、どこからか春めいた風が吹き、一帯を花吹雪がさらっていった。

沈む夕日の燃えるような赤と黄金色に照らされたその風景は、息を飲むほど美しくて・・・・・・

ザント「・・・・・・」

花びらを舞う空を見上げたザントさんの表情は、それまでよりずっと穏やかだった。

ザント「今はこの周辺だけだが、きっと来年の春にはこの辺りの大地一帯が力を取り戻すだろう。 そしたらもう一度、アンタをこの国に招待すると誓うよ」

○○「ザントさん・・・・・・はい、お待ちしています」

彼は私に手を伸ばす。

控えめに微笑んだ彼は、少しだけ自信を取り戻したようだった。

伸ばされた手を取り、彼の逞しい腕に抱きしめられる。

○○「・・・・・・っ」

ザント「あ・・・・・・すまない、強くしすぎたか?」

慌てて離れようとする彼の背に、私はそっと腕を回した。

ザント「○○・・・・・・ありがとう」

今度は、優しく包み込むように、ザントさんが私を抱きしめ直す。

(きっといつか、この丘全体が花でいっぱいになる時・・・・・・)

(ザントさんの心も、今よりずっと穏やかになっていますように)

そう淡い願いが大地に届くように祈りながら、

私はザントさんの腕の中で静かに目を閉じたのだった・・・-。

おわり。

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