太陽SS 約束の丘で

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ザント「今はこの周辺だけだが、きっと来年の春にはこの辺りの大地一帯が力を取り戻すだろう。 そしたらもう一度、アンタをこの国に招待すると誓うよ」

〇〇「ザントさん……はい、お待ちしています」

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翌日…―。

命を吹き返した丘の上に立ち、深呼吸をした。

花々の香りが体中を駆け巡る。

(……アイツは今頃、どうしているだろうか?)

広がる青い空を見つめて、〇〇を想う。

すると……

兄王「これが……本当にあの場所か?」

従者を連れてやって来た兄貴が、祠の周りに咲く花々を見て驚きの声をあげる。

ザント「見違えただろう?」

兄王「ああ。信じられない……」

ザント「今はまだこの辺りだけだけど、必ず、丘中を甦らせるつもりだ」

そう告げると、兄貴は俺の顔を見つめて笑みを浮かべた。

ザント「……なんだ? 人がせっかく真面目に話しているのに」

兄王「すまない。なんだか嬉しくてな、つい……」

ザント「……だからって笑うことはないだろ……」

兄王「そう怒るな、悪気はないんだ。 それにしても……まさか、こんな日が来るなんてな」

そう言って、兄貴は感慨深そうな表情を見せた。

ザント「……そうだな」

(俺だって、こんな日が来るとは思わなかった)

(兄弟揃って、この場所に立つなんて……)

目の前を、色鮮やかな蝶のつがいが飛んでいく。

(花の蜜に誘われて来たのか)

ひらひらと舞うその姿を見つめていると……

兄王「……本当に嬉しいよ」

小さくつぶやく兄貴の顔は、心から嬉しそうだった。

(わかっていたんだ。兄貴がずっと俺を心配してくれていたこと)

(それなのに、俺は……)

ザント「……今まで」

兄王「ん?」

俺は兄貴に背を向けて、小さく口を開く。

ザント「今まで、悪かったな。その……心配かけて」

兄王「ザント……」

俺の名を呼ぶ兄貴の声は、とても温かい。

(やっぱり、照れくさいもんだな)

背中を向けたまま、俺は足元の花へと視線を向けた。

すると……

従者「国王様。そろそろお時間でございます」

兄貴の従者が、遠慮がちに口を開いた。

兄王「そうだったな……。 私は公務だから行くが、お前はどうする?」

ザント「草花の手入れをしていく。まだ向こうの方とかを片づけないと…―」

そう言いかけて、異変に気づいた。

ザント「……なんで片づいてるんだ?」

見れば、散乱していた瓦礫が綺麗に端へと寄せられている。

従者「あの……」

ザント「なんだ?」

従者「い、いえっ……なんでもございません……」

ザント「気になるだろう? 言ってくれ」

従者「あっ、はい。その……実は、口止めされていたのですが……」

従者は申し訳なさそうに、言葉を続ける。

従者「今朝早くに、〇〇様が片づけておられました」

ザント「〇〇が?」

従者「はい。少しでもお役に立ちたいからと……」

(アイツ……)

(出発間際まで作業していたのか?)

片づけられた瓦礫を見つめ、〇〇を想う。

(……どこまでもお節介な奴だ)

(でも、そんなところが……)

彼女の姿を思い返すと、笑みがこぼれた。

すると……

兄王「お前のそういう顔は、久しぶりだ」

ザント「……!」

兄貴の言葉に、俺ははっと我に返る。

兄王「一番変わったのは、お前だな。ザント」

ザント「俺は、別に…―」

兄王「ははは、〇〇さんには一生頭が上がらないな」

兄貴はそう言って、従者と共に城へと戻っていった。

ザント「く……兄貴の奴……」

(……だが、確かに兄貴の言う通りかもしれない)

(アイツと出会ったおかげで……俺は一歩を踏み出せた)

そっと土に触れてみると、溢れんばかりの生命力が指先から伝わってきた。

――――

〇〇「あなたの大地の力で、ここをちゃんと安らげる素敵な場所にしてあげてください。 ……ご両親も、きっとザントさんのことを心配していらっしゃると思います」

――――

ザント「安らげる場所……。 ……そう、だな」

静かに風が吹き、花々が揺れる。

その甘い香りに包まれながら、俺は……

(美しい花々で丘を埋め尽くし、たくさんの人達に訪れてもらおう)

(ここをアンタに誇れるような、そんな場所にしてみせる)

(俺の手で、必ず……)

今は遠く離れている彼女へと強く誓ったのだった…―。

おわり。

<<太陽最終話||月覚醒へ>>


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