むせ返るような砂ぼこりの中、切羽詰まった男性達の怒声が響き渡る…-。
私は、事故の起きた鉱山で怪我をした人の介抱をしていた。
〇〇「あ……」
少し離れたところに、一人の男性が座り込んでいる。
見れば、その人は足に怪我を負って、動けないようだった。
〇〇「大丈夫ですか!?」
すぐに彼に駆け寄り、肩を貸そうと手を伸ばす。
その時…-。
作業員の声「危ない!!」
空気を切り裂くような声が聞こえたかと思うと、頭上で何かが崩れるような音がした。
〇〇「……!!」
崩れ落ちてくる岩陰が私を飲み込み、思わず固く目をつぶる。
けれど…-。
(え……?)
轟音がしたのに、予想した衝撃はない。
恐る恐る目を開けると、降ってきた岩が、粉々の石ころとなり私達の周りに降り注いでいた。
ウィリアム「……感心しませんね」
ハッと後ろを振り返ると、高枝切りバサミを構えたウィリアムさんの姿があって…-。
ウィリアム「仕事に感情を持ち込むと、余計な手間が増えます」
(ウィリアムさんが、岩を砕いてくれた……?)
〇〇「ウィリアムさん……どうして…-」
彼は私を鋭く見据えると、くいと眼鏡を押し上げた。
ウィリアム「これではまた、今日も定時で上がれない」
わずらわしそうに手袋についた砂を払うウィリアムさんを、私は呆然と見つめていた…-。