太陽最終話 二人で紡ぐ物語

窓から流れる涼やかな風が、プリトヴェンさんの髪を揺らす。

プリトヴェン「どんな理由があったとしても、勝手にその……唇を奪うなんて」

申し訳なさそうに瞳を伏せる彼の誠実な姿勢が、私の胸を熱くした。

〇〇「プリトヴェンさんは、私のことを助けてくれました」

(さっきの私は……普通じゃなかった)

あの時、プリトヴェンさんがいてくれなかったらと想像するだけで、身が震える。

そんな私を見たプリトヴェンさんは、震える手に手を重ねて握ってくれた。

プリトヴェン「……『死神とリンゴ』の物語になぞられて、君が死神に操られているかもしれないと思ったんだ。 だとしたら、この物語の主人公は君なんじゃないかって……」

(……私が、主人公?)

プリトヴェン「絵本では、死神の呪いをかけられた娘は王子のキスで目が覚める。 それで、俺は…-」

心が灯った小さな光が、まばゆく輝き出す。

(……プリトヴェンさんは、王子様の役だったんだ)

プリトヴェン「いくら恋人同士だからって、君の同意も得ずにこんなことして、本当にごめん。 君との関係は、大切に進めていきたいって思ってたのに……」

私のことを私以上に大事に想ってくれる気持ちが、嬉しくてたまらない。

〇〇「……嬉しいです。 私が恋をする王子様は、プリトヴェンさんしかいませんから」

プリトヴェン「……!」

熱を帯びた瞳と視線がぶつかった瞬間……

私達の間に、黄金色に輝く鍵が舞い落ちてくる。

〇〇「これって……?」

不思議な輝きを放つ鍵を、プリトヴェンさんは手のひらで受け止めた。

プリトヴェン「……もしかして、これで絵本の中から出られるってことか?」

〇〇「本当ですか? ……っ」

プリトヴェン「〇〇!?」

立ち上がろうとするけれど、気が抜けたせいか足に上手く力が入らない。

〇〇「……すみません。少しだけ待ってもらえますか? 気が抜けちゃったみたいで…-」

プリトヴェン「……大丈夫、任せて」

当たり前のように彼は私に腕を伸ばし、軽々と抱き上げる。

〇〇「……!」

プリトヴェン「外へ出てみよう。掴まってて」

〇〇「……はい」

高鳴る鼓動を感じたまま、鍛え抜かれた厚い胸に身を預けた…-。

……

彼に横抱きにされたまま小屋を出ると、リンゴの装飾がされた扉が現れていた。

〇〇「あの扉…-」

澄み渡る青空の下、扉を囲むように可憐な野花が咲き乱れる。

プリトヴェン「きっとこの鍵で、元の世界に戻れるんじゃないかな?」

〇〇「絵本のお話も、これで終わりですね」

プリトヴェン「めでたしめでたしってことで、いいのかな」

(物語を終わらせる前に、ちゃんと私からもこの気持ちを伝えないと)

彼が想ってくれた分、しっかり返したい。

募る想いに身を任せて、私は彼の耳元に唇を寄せた…-。

スチル

〇〇「さっきのお話なんですけど……。 私、プリトヴェンさんにされて嫌なことなんて、一つもありません」

プリトヴェン「えっ」

驚いたように目を丸くする彼と視線がぶつかり、頬が熱を帯びていく。

〇〇「プリトヴェンさんが思う以上に、私は…-。 プリトヴェンさんのことが大好きなんですよ?」

彼に向かう愛おしい気持ちが、言葉となってこぼれ落ちる。

プリトヴェン「……〇〇」

(私はプリトヴェンさんが好き)

(だから、プリトヴェンさんが私を想ってしてくれたことなら、なんだって……)

〇〇「だから……もっと自信を持ってください」

そう伝えると、色づく彼の頬に口づけを落とした。

プリトヴェン「……!」

唇を離すと、静かに私を見つめ返す彼と視線が絡み合う。

どちらからともなく微笑み合うと、優しい風が野花の花弁を舞い上がらせた。

プリトヴェン「……やっぱり君は特別だな」

照れたように目を細めながら、紡がれる言葉は力強さを秘めている。

〇〇「え?」

プリトヴェン「君以上に大切に想える女性に、出会える気がしない。 知れば知るほど……君への想いが募っていくから」

(……嬉しい)

私を抱き上げる腕はどこまでも優しくて、大きな愛で包まれているような気がした。

(私にとっても、プリトヴェンさんは…-)

かけがえのない存在の大きさを改めて感じて、心に幸せが満ちていく。

プリトヴェン「さあ、行こうか」

〇〇「はい」

扉へと歩き出す、凛とした彼の横顔を見上げる。

(絵本のお話は終わるけれど…-)

彼の腕に抱かれながら、これからも続いていくプリトヴェンさんとの物語に思いを馳せた…-。

おわり。

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