太陽SS 愛しい姫と

窓から差し込む陽の光が目にかかり、ゆっくりと顔を上げる…-。

(もう……朝か)

浅い睡眠を取りながら、念のため外への警戒は続けていたけど……

(やっぱり、警戒しすぎかな)

ふと見ると、ベッドでは彼女が小さな寝息を立てて眠っている。

〇〇「……」

(気持ちよさそうだな)

その穏やかな寝顔が心をくすぐった。

(こんなふうに君と朝を迎えるなんて思ってなかったけど……)

(こんなかわいい顔を見られたんだから、役得ってやつなのかも)

朝日がまぶしかったのか、彼女は小さな寝返りを打つ。

はだけた毛布をかけ直そうと手を伸ばした時……

〇〇「……ん」

大きく寝返りを打った彼女の腕が、屈んだ俺の首へと回された。

プリトヴェン「……!?」

ぐいっと引き寄せられそうになって、体中に緊張が走る。

(ち、近い……!)

突然近づいた無防備な寝顔に顔が熱を持つけれど、規則正しく揺れる長いまつ毛から、俺は目が離せなくなる。

(……君は知らないんだろうな)

(俺がこんなにも君に気持ちを揺さぶられてるなんて……)

〇〇「……す」

深い眠りの海にいる彼女は、ぴくりと唇を動かした。

(……寝言?)

〇〇「……大好きです……プリトヴェンさん」

プリトヴェン「!!」

(今の……)

鼓動が一気に速まる俺の横で、彼女は眠り続けている。

なんとか気持ちを落ち着かせながら、そっと小さな耳元に唇を寄せた。

プリトヴェン「……好きだよ。俺も、君のことが大好きだ」

〇〇「……」

(夢の中まで届いたかな)

頬を撫でる甘い吐息が誘っているようで、つい口づけをしたくなってしまうけれど……

すんでのところで我に返る。

(駄目だ……こんな寝込みを襲うような真似)

(〇〇との関係は、ちゃんとしたい)

彼女を起こさないように、ゆっくりと離れた瞬間……

プリトヴェン「……!」

誰かに見られているような感じがして振り返る。

けれど、そこには大きな鏡台があるだけだった。

(……気のせいか)

かけられた白い布がわずかにずれて、そこから鏡面が覗いている。

鏡の布をかけ直すと、ふっと息を吐いた。

(そういえば、〇〇が言っていた話に似た物語を、昔読んだな)

リンゴと鏡が出てくる絵本を読んだのは、いつだったか……

記憶をたどりながら視線をベッドに戻すと、彼女はまだ夢の中だった。

(今はゆっくりとおやすみ)

(この先どんなお話が待っていようと、俺が君を必ず守るから)

幸せそうに眠る愛しい恋人に、俺は静かに誓った…-。

……

真っ赤なリンゴを食べようとしている彼女は、なぜか戸惑いの表情を浮かべている…-。

(……やっぱり、様子がおかしい)

プリトヴェン「〇〇!」

彼女の両腕を掴むと、弾かれたように彼女の手からリンゴが転がっていく。

プリトヴェン「俺のことがわかるか?」

口をつぐんだままの瞳は、助けを訴えているように思えた。

(もしかして……)

プリトヴェン「しゃべれないのか?」

困惑したような眼差しの彼女は、俺の腕から逃れようとする。

(これは〇〇の意思じゃない)

プリトヴェン「何かに操られて……まさか」

(……死神)

(魂を奪うためにリンゴを……? だとしたら、主人公である彼女を救うには……)

(いや……でもそれは…-)

迷ったのは一瞬だった。

揺れる〇〇の瞳と、目が合う。

(守るものの順番を、間違えるつもりはない)

俺は大きく息を吸うと、彼女の腰を抱き寄せる。

(死神の呪いを解くのは、王子のキス)

プリトヴェン「……っ。 責任は、ちゃんと取るから」

俺は想いを込めて、彼女の唇に自分の唇を重ねた…-。

……

彼女を抱き上げた俺は、花々の香りに囲まれながら歩く。

(後悔はない、けど……)

結果的に、彼女の唇を独断で奪ってしまった俺は、複雑な思いを抱いていた。

すると…-。

〇〇「プリトヴェンさんが思う以上に、私は…-。 プリトヴェンさんのことが大好きなんですよ?」

舞い上がる花びらのように可憐な声が、俺の耳元をくすぐる。

(君は……)

(どうして俺がほしいと思う言葉をくれるんだろう)

〇〇「だから……もっと自信を持ってください」

そう告げられた瞬間、俺の頬に柔らかな彼女の唇が触れた。

プリトヴェン「……!」

(……本当に、敵わない)

プリトヴェン「……やっぱり君は特別だな」

(……君はいつも、俺の想像を簡単に超えてくる)

唇を離した彼女は、どこまでもまっすぐな瞳で俺を見つめている。

(心臓がいくつあっても足りないって、思うけど…-)

(そんな君が……とても愛おしんだ)

舞い上がる花弁の下で、世界で一番大切な女性を抱きしめる。

愛しい姫とのこれからの物語は、より幸せな予感に満ちていた…-。

おわり。

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