太陽最終話 結末は、二人で

夜の空気を切り裂いて、私達を乗せた箒は勢いよく空を滑る。

ドロワット「……あいつか」

颯爽とバルコニーに降り立ったドロワットさんの視線を追うと、並び立つ兵士達の後ろに、王冠を被った男性の姿があった。

(あの人が、『ガラスの靴』の王子様……)

ドロワット「お前らに本物の魔法ってやつを見せてやるよ!」

力強い声が響き、ドロワットさんの腕が高々と掲げられる。

彼の指先がパチンと鳴ったかと思うと、辺りはまばゆい光に包まれた…-。

……

閃光が収まり、そっと目を開けると……

兵士達の姿は消え、代わりにたくさんの白いウサギ達が体を寄せ合っていた。

〇〇「!」

ドロワット「ったく、どいつもこいつも歯ごたえがねぇな」

〇〇「ドロワットさん、この子達はもしかして……」

ドロワット「城の連中だよ。これでもう悪さはできねぇだろ?」

ウサギ達は皆、落ち着かない様子で辺りを見渡している。

ドロワット「時間が経てば解ける魔法だ。心配すんな」

ドロワットさんは私の頭に手を乗せてから、ウサギの群れに向かって歩き出す。

ドロワット「しかし、参ったな。勢いで、王子までウサギに変えちまった」

ドロワットさんの足元で、王冠をつけたウサギが耳を震わせている。

〇〇「このお話、どうやって完結させましょうか……」

(物語を終わらせないと、元の世界に帰れないんだよね……?)

ドロワット「何悩んでるんだよ? 完結させる方法なんざ、わかりきってるだろ」

〇〇「え……?」

戸惑いながら顔を上げた私を、彼は腕の中に閉じ込めて…-。

スチル

ドロワット「王子がいなくなっちまったなら、俺がその役をやればいい。 もともと俺達は、新しい物語を作りに来てんだ。なら、結末だって俺達が決めていいはずだ」

〇〇「……っ」

耳元で囁く彼の声に、じわじわと頬が熱くなる。

ドロワット「悪役を倒して、愛し合う二人が結ばれて……最高のハッピーエンドだろ? それともまさか……。 物語に出てくる素敵な王子様と、いい感じに結ばれたかった……とか言うんじゃねぇだろうな?」

尋ねるドロワットさんの声は、どこか拗ねているようにも聞こえた。

〇〇「いいえ……結ばれるなら、ドロワットさんとがいいです。 私にとって一番素敵な王子様は、ドロワットさんですから…-」

鼓動を高鳴らせながらも、なんとか想いを言葉にして、彼にそっと体を預ける。

ドロワット「……っ。 惚れた女にそこまで言わせるなんて、さすが俺だ」

彼の腕に力がこもり、呼吸ができないほど強く抱きしめられた。

ドロワット「俺が結ばれたい女も、お前だけだ。たとえ物語の中だって、他の男になんか渡してやらねぇよ」

はっきりとした口調で告げられた瞬間、バルコニーに白い光が差し込んで…-。

驚きながら光の先をたどると、そこには小さな鍵が浮かんでいた。

ドロワット「外の世界に戻る鍵だ。無事、新しい物語を完成させられたみたいだな」

(よかった……)

〇〇「帰る前に……少しだけ、待ってください」

煌めく光を浴びながら、私はそっとガラスの靴を脱いだ。

ドロワット「おう、〇〇……?」

〇〇「ガラスの靴は、ここに置いていきます。 この靴は、この世界の王子様と結ばれるためのもので……私には必要ないですから」

私の言葉を聞いたドロワットさんは、嬉しそうに大きく頷いた。

ドロワット「ああ、その通りだ! お前に靴を贈るのは、俺だからな」

裸足になった私を、ドロワットさんが横抱きに抱き上げる。

〇〇「……っ」

ドロワット「それじゃ、帰るとするか。 元の世界に戻ったら、ハッピーエンドの続きをしようぜ」

〇〇「はい……!」

楽しげに囁くドロワットさんの首に、手を回して体を寄せる。

彼の香りに包まれながら、私はこの世界を出た後の二人の物語に想いを馳せていた…-。

おわり。

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