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〇〇『確かに、二人は結ばれませんでした。 だけど令嬢にとって、文豪と出会えたことはこれ以上ないほど幸せで……。 だから、それで充分だったんじゃないかって思うんです』
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自分なりの解釈を口にする私を、カゲトラさんは驚いた顔をしながら見つめていたけれど…-。
カゲトラ「……そうか。お前もそんなふうに解釈したんだな」
〇〇「お前もってことは、カゲトラさんもですか?」
カゲトラ「ああ。 って言っても俺は、文豪側の視点での解釈だけどな」
唇の片側をわずかに上げるカゲトラさんを見ていると、その内にある気持ちや、彼の解釈が知りたくなってくる。
〇〇「カゲトラさんの解釈も聞いてみたいです」
カゲトラ「構わねえが……今日はもう遅い。 だからまた明日、俺に時間をくれねえか? お前を連れて行きたいところがあるんだ」
〇〇「わかりました」
突然のお誘いに少し驚きながらも、こくりと頷く。
カゲトラ「じゃあ、昼頃迎えに来る。 長居して悪かったな。おやすみ」
〇〇「はい……おやすみなさい」
ぽんぽんと私の頭を撫でたカゲトラさんが、部屋を後にする。
撫でられたことを嬉しいと思う気持ちと、彼がいなくなって寂しい気持ちを抱きながら、私は窓辺に立ち、去っていく彼の背中を見送るのだった…-。