藤目さんと別れてから、数日…-。
滞在している宿の窓辺から、私はぼんやり夜空を見上げていた。
白く輝く月が、寂しげに浮かんでいる。
(藤目さんの執筆、進んでるかな……あともう少しって飛鳥さんは言ってたけど)
(会いたいな……)
藤目さんのことを考えると……
??「〇〇さん」
不意に名前を呼ばれ、私は慌てて窓の外を見る。
〇〇「藤目さん……!」
そこには、まさに今思い描いていた彼の姿があった…-。
〇〇「藤目さん、どうしたんですか?」
藤目「貴方はどうしているだろうかと、つい訪ねてしまいました」
藤目さんはそう言って恥ずかしそうに笑った。
藤目「〇〇さん、お願いがあります。 明日から、私の城に滞在していただけませんか?」
〇〇「え?」
突然の申し出に目を瞬かせる私に、藤目さんは苦笑いを浮かべる。
藤目「貴方を待たせてしまっていると思うと気になって、筆が進まないんです。 でもご存知の通り、あまり猶予がなくて……。 我ながら困ったものです」
肩をすくめる藤目さんに、私も思わず笑みが漏れて……
〇〇「わかりました。私でお役に立てるなら」
藤目「ありがとうございます」
微笑み合う私達を、優しい月の光がそっと照らしていた…-。