太陽最終話 不思議で愛しい時間

突然訪れた浮遊感に驚いた私が、慌てて目を開けると、目に飛び込んできたのは、ものすごい速さで遠ざかっていく街の景色だった。

〇〇「! ティンプラさ…-」

ティンプラ「目的地に到着。危険なので、このままボクから離れないでください」

トン、という音と共に浮遊感が消え……

ティンプラさんは抱きかかえていた私の体をそっと下ろすと、肩を優しく抱き寄せる。

〇〇「ここって……」

頭上には先ほどよりも近くなった星空が、そして眼下には柔らかな光を湛える街があった。

〇〇「もしかして時計台の上……ですか?」

ティンプラ「はい」

私はその返事を聞いてようやく、ティンプラさんが私を抱きかかえて時計台の上に飛んだのだと気づいた。

〇〇「まさか、時計台の上に来るなんて……」

ティンプラ「ボクだからこそできる悪戯を、と思ったのですが……驚きましたか?」

(いたずら……)

〇〇「そういうことだったんですね。 すごく驚きました。まさか、こんなところに来られるなんて思わなかったから」

ティンプラさんにキスされると勘違いしたことを恥ずかしく思いつつも、私は思わず笑みをこぼす。

そんな私を見たティンプラさんも、ふっと微笑を浮かべた。

ティンプラ「……また、幸せな違和感を覚えました。 いえ、違いますね。この違和感の名前を、ボクはもう知っている」

左胸にあるプリズムに、彼がそっと手を置く。

ティンプラ「それは……」

 

そこまで言ったところで、ティンプラさんは街を静かに見下ろす。

収穫祭で賑わう街にはオレンジや紫の光が灯り、幻想的な雰囲気を醸し出していた。

(綺麗……)

自分一人ではとても見ることができない景色に、思わずため息を吐く。

すると、その時……私の肩を抱く手に少し力が込められた。

ティンプラ「嬉しい。 キミと一緒に、この景色を見られて……。 キミを笑顔にできて嬉しいと、ボクの心がそう言っています」

〇〇「ティンプラさん……」

私の肩を抱く手とは、反対側の手……

その下には、彼がようやく探し当てた心がある。

〇〇「私も嬉しいです。あなたが笑顔になってくれて」

(探し求めていた心の在り処に、気づくことができて……)

美しい街を見下ろしながら、私達はお互いの想いを伝え合う。

彼の腕に抱かれながら見るこの景色は、とても特別なもののように思えた。

ティンプラ「この国でキミと一緒に過ごした不思議で愛しい時間を、ボクは絶対に忘れません。 今目の前に広がる景色も、キミの温もりも……。 そしてボクを幸せにするキミの笑顔も、この胸の奥にある心に刻み込まれましたから」

少し冷たい夜風が吹き抜ける中、私達は自然と見つめ合う。

ティンプラ「〇〇」

私の名前を呼ぶその声に心地よさを感じていると、ティンプラさんは、再び私の両肩に手を置いた。

そして……

ティンプラ「もう一度……目を閉じてもらえませんか?」

澄んだ二つの瞳が、私を射抜く。

〇〇「はい」

ティンプラさんに、私は小さく頷き……

遠く聞こえてくる街の喧騒を耳にしながら、そっと目を閉じる。

すると微かな吐息がかすめ……唇に、柔らかな感触が訪れるのだった…-。

おわり。

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