太陽SS 心に刻む思い出

街を一望できる時計台に、〇〇と並んで立つ。

〇〇「まさか、時計台の上に来るなんて……」

夜空で瞬く星々と、遠くまで続いている街明かり……

その狭間で、〇〇は目を丸くしながら辺りを見渡していた。

ティンプラ「ボクだからこそできる悪戯を、と思ったのですが……驚きましたか?」

〇〇「すごく驚きました。まさか、こんなところに来られるなんて思わなかったから」

輝くような彼女の笑顔を目にした瞬間、左胸のプリズムの奥がじんわりと温かくなる。

(これは……)

ティンプラ「……また、幸せな違和感を覚えました。 いえ、違いますね。この違和感の名前を、ボクはもう知っている」

そこまで言ったところでボクは街を見下ろし、彼女の肩を抱く手に、少し力を込めた。

(この違和感の正体。それは……)

ティンプラ「嬉しい。 キミと一緒に、この景色を見られて……。 キミを笑顔にできて嬉しいと、ボクの心がそう言っています」

(この奥にあるもの……)

(温かくて甘い、とても大切な気持ち)

(それは……キミを想う心)

〇〇「私も嬉しいです。あなたが笑顔になってくれて」

〇〇の言葉は、まるでボクの心の構造がすべてわかっているかのように、ボクの心を揺さぶり、熱くする。

(大好きです)

(キミが、愛しい……)

熱くなった心からは、そんな言葉達が溢れてきて、広がる美しい景色は不思議なぐらい輝いて見えた。

ティンプラ「この国でキミと一緒に過ごした不思議で愛しい時間を、ボクは絶対に忘れません。 今目の前に広がる景色も、キミの温もりも……。 そしてボクを幸せにするキミの笑顔も、この胸の奥にある心に刻み込まれましたから」

(一生……忘れません)

風が、〇〇の柔らかな髪を揺らす。

まるで宝石のように輝く彼女の瞳に、ボクだけが映っていた。

(キミがボクを見ている)

(そのことが、こんなにも嬉しい)

だけど、心は強欲で……

(……キミに、もっと触れたい)

見つめ合うだけで充分だという気持ちは本当なのに、心は彼女を求めてしまう。

(この強欲な心を、キミは受け入れてくれるでしょうか?)

ティンプラ「〇〇」

ボクは、そっと彼女の両肩に手を置く。

(先ほどは、悪戯でしたが……)

(今度は本気です)

(ボクはキミに触れたい)

ティンプラ「もう一度……目を閉じてもらえませんか?」

〇〇を見つめながら口にした言葉は、自分でも驚くほどに低い。

予期せぬ声色に一瞬戸惑いを覚えるものの、彼女を見つめ続けていると……

〇〇「はい」

〇〇が、そっと目を閉じる。

長いまつ毛も、月に照らされる白い肌も、艶めく唇も……

(……綺麗です)

触れるだけの短いキスの後、彼女を彩るすべてに、ボクの心は打ち震えていたのだった…-。

……

あの不思議に満ちた夜から、数日…-。

兵士1「ティンプラ様、お帰りなさいませ」

ティンプラ「ただいま」

虹の国に帰ってきたボクを、兵士達が迎えてくれる。

ティンプラ「ボクがいない間、問題は?」

兵士2「ありません。魔法使い同士の衝突が数回発生しましたが、いずれも軽微な…-」

ボクは兵士達に、不在の間の状況を報告してもらう。

ティンプラ「了解」

特に大きな問題が発生していないことを確認した後、短く返事をした。

そして……

ティンプラ「ありがとう。ボクが不在の間、国を守ってくれて」

兵士1・2「え……?」

ボクの言葉に、兵士達が顔を見合わせる。

ティンプラ「? その表情は……戸惑い? ボクは、キミ達を困らせてしまった?」

兵士1「いっ、いえ! そんなことはありません。 ただ、ティンプラ様が少し変わったように見えたので……」

ティンプラ「変わった……?」

兵士2「はい。なんと言いますか、少し表情が柔らかくなったように思います」

(表情……)

その瞬間、〇〇の姿が頭をよぎった。

(人の表情を変えるもの。それは……)

(胸の奥にある……心)

そっと胸にプリズムに触れる。

(ボクが変わった理由を、どんな言葉にすれば正しく伝わるのか、まだよくわからない)

(だけど……)

ティンプラ「大切な人との忘れられない思い出が、ここに刻まれたからかもしれません」

探し当てたばかりの心が告げるままに思いを伝えると、兵士達は、温かさを感じる笑みを浮かべたのだった…-。

おわり。

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