太陽SS 子どもだと思うなよ

いよいよ迎えた、エッグレースの決勝戦…-。

司会者「それでは、用意……スタート!」

レースが始まると、応援席から大きな歓声が沸き上がる。

その中には、〇〇の姿ももちろんあった。

〇〇「ゴーシュくん! 頑張って……!!」

(任せろよ……絶対優勝するから!)

心の中で返事をして、全力で走っていく。

ゴーシュ「っ……」

今日までの特訓の甲斐あって、出だしは順調だった。

だけど……

ゴーシュ「わっ……!」

隣を走っていた走者に肩がぶつかってしまう。

(絶対に落とすかよ……おれは、負けられないんだ!)

落ちそうになった卵に気を取られたものの、なんとか立て直す。

だけどその時にはもう、何人かに追い抜かれてしまっていた。

ゴーシュ「くっ……」

(諦めてたまるか……)

おれはまっすぐに前を見つめる。

(〇〇のキスを、他の奴に渡すなんて絶対に嫌だ……)

(皆を笑顔にしたいって思うけど……でも……)

(〇〇のことだけは、誰にも……何があったって絶対負けないからな!)

あと三人……あと二人……と追い抜かしていく。

(正々堂々、魔法は使わずに……)

(皆と同じ条件で勝って、〇〇を勝ち取るんだ……!)

そう思いながら必死に走り、最後の一人を追い抜いた、次の瞬間…-。

司会者「ゴーール!! 優勝はゴーシュ王子です!!」

会場から、これまでで一番大きな歓声が沸き上がる。

(勝った……おれが、勝ったんだ……!)

応援席にいる〇〇が嬉しそうな表情を浮かべておれを見ている。

(喜んでくれてるんだ……)

そう思ったら、嬉しくて仕方がなくなって…-。

ゴーシュ「〇〇!」

おれは案内された表彰台の上から〇〇を呼び、少し戸惑った表情を浮かべながらやって来た彼女に手を差し出して、表彰台に上がらせた。

男の子1「ゴーシュさま、おめでとー!」

男の子2「おめでとう! すっごくかっこよかったよ!!」

〇〇「私からも……おめでとう、ゴーシュくん」

たくさんの祝福の声と共に、〇〇の笑顔がおれへと向けられる。

〇〇「私、本当にすごく感動して…-」

ゴーシュ「うん……じゃあ……。 賞品のキス、くれるよね?」

〇〇「えっ!? こ、ここで?」

ゴーシュ「あんたのために勝ったんだ。だから早くご褒美、ちょうだいよ」

戸惑っているのがよく見えて、おれはちょっと楽しくなる。

(こういう顔をする〇〇って、かわいいんだもんな)

そう思うと、イタズラ心がむくむくと湧き上がる。

ゴーシュ「ねえほら、早く!」

からかうように〇〇を急かす。

〇〇「……っ」

彼女は真っ赤な顔をして、しばらく戸惑っていたけど……

意を決したように、そっとおれの肩に手を添えた。

そして…-。

ゴーシュ「……っ!!」

おれの頬に、小さくキスが降ってくる。

(まずい、こんなにどきどきするなんて……!)

ゴーシュ「なっ、なんだよ! ほっぺたかよ」

〇〇の姿をまともに見られないおれは、唇を離す彼女からちょっと目を逸らして文句を言う。

〇〇「あ……だ、駄目だった?」

ゴーシュ「べ、別に悪くないけど……でも、せっかく優勝したのに……それだけ、かよ」

(だって、大人のキスはこういうのじゃないんだろ?)

(へ、平気な顔して言ってやんなきゃ……)

〇〇「それだけって……」

〇〇は、さっきよりもさらに頬を赤くしてつぶやく。

ゴーシュ「いいから、はやく! もう一回!」

〇〇「……」

また、〇〇の顔が近づいてきた。

ゴーシュ「……っ」

頬に触れた唇は、さっきと同じように柔らかく温かで……

(……悔しい、けど)

(おれ、今ものすごく幸せだ……)

心臓が、壊れそうなほど激しく脈打った。

ゴーシュ「……ま、まあ! いいってことにしといてやるよ!」

くるっと背中を向けて、顔が見られないようにする。

そして……

(くそ……まさか、こんなことになるなんて思わなかった)

(西の魔法使いと呼ばれるおれが、こんなに翻弄されるなんて……)

(恋って思った以上に手に負えないものなんだな……)

おれは自分の変化に戸惑いながら、まだ温もりが残る頬に、そっと指先で触れたのだった…-。

おわり。

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