太陽最終話 君の色を

材料を一通り揃えると、私達は染料を見せてもらった工房へとやって来た。

ウィルさんが、今日のために工房の中の一部屋を借りてくれたらしい。

ウィル「さぁて、君はどんな色だろう?」

テーブルに広げた材料を見渡して、ウィルさんが腕を組む。

ウィル「君はいろんな色を持っているからね。一つに絞るのは難しいなぁ」

ウィルさんは私の方を振り向いて、困ったように眉を寄せる。

ウィル「怖がっている君はこの色かな?」

ウィルさんが瓶に入った粉を染料に混ぜ合わせた。

ウィル「これはラピスラズリを細かく砕いて粉末にしたものなんだ。 君が恐怖で真っ青になった時に似ていない?」

〇〇「こんなに青くなってますか?」

真っ青に染まっていく液体を見て、私は思わず笑ってしまう。

ウィル「そうだね。倒れそうなほど真っ青だよ。僕が一番好きな顔だ。 けど、綺麗な青だろう? 極上の青だ」

〇〇「はい……」

不意打ちのように出た『好き』という言葉に、思わず胸が音を立てる。

ウィル「僕から騙された! って怒っている時の君はこの色」

今度は赤い花を手に摘み、力強く握りしめる。

拳から真っ赤な液体が数滴、染料の中に落ちていく。

ウィル「本当はすごく怒っているのに……君は優しいから、これぐらいで許してくれる。 それで調子に乗って、君をもっと怖がらそうとしてしまうんだけど」

〇〇「今度はもっと怒れるようにします」

ウィル「それは怖いな」

そう言いながらも、ウィルさんは楽しそうに笑う。

ウィル「忘れちゃいけないのが、この紫。これは君がゾンビを見た時に…-」

私のことを話しながら、ウィルさんが色を足していく。

(私のことをこんなによく見てくれていたなんて……)

(嬉しい……)

一つ色を足される度に、私の胸にウィルさんへの想いが溢れていくような気がした。

……

しばらくして、ウィルさんが完成した色を私に見せてくれた。

瓶の中で輝く色鮮やかなピンク色に、私は目を奪われる。

〇〇「綺麗……」

(ウィルさんから見た私は、こんな綺麗な色をしているの……?)

嬉しさと気恥ずかしさがないまぜになって、どう言葉にしていいかわからなくなっていると……

ウィルさんが、私を後ろからそっと抱き寄せた。

〇〇「っ……!」

ウィルさんの温かさに包まれて、胸が高鳴っていく。

ウィル「僕にとっての君は……今はこんな色をしてる。 そして、この街にも負けないほど鮮やかに僕の瞳に映ってる……」

ウィルさんが瓶を手に取った。

明かりに反射して、ピンク色の液体がきらきらと輝く。

ウィル「でも君の色はきっと、笑ったり怒ったり、悩んだり……怖がったり、さまざまな色に変化する。 その色ひとつひとつが、僕の心を刺激する。 あ。もちろん怖がった時の色が一番だね」

いたずらっぽく笑って、ウィルさんが私の耳元に唇を寄せる。

唇が耳に触れ、そのくすぐったさに思わず瞳を閉じた。

ウィル「君には君の個性や色がある。 それに経験や思い出を重ねて、この色はもっと深みを増すのかもしれないね」

ウィルさんの囁く声が、私の胸にすっと入ってきて広がっていく。

私を認めているのだと言ってくれているようで、嬉しくなる。

〇〇「経験や思い出……」

ウィル「そう、だから僕は君から目が離せなくなるんだ」

〇〇「え……?」

後ろを振り返ると、ウィルさんと視線が重なった。

ウィル「気づいていない? 僕はずっと言っていたつもりなんだけどなあ」

(それって……)

胸の鼓動がさっきよりも大きくなっていく…-。

ウィル「誰が言ったのか、ピンクは恋の色なんだって。 この色は、僕の想いも乗せて鮮やかなピンクになったのかもしれないね。 こんな色が僕の中にあったのも不思議だけど」

〇〇「ウィルさん……」

嬉しさを込めてウィルさんの腕にそっと触れると、彼は私を強く抱きしめた。

ウィル「今の君もこれからの君も愛しているよ」

優しく囁いて、ウィルさんが私の耳に口づけを落とす。

柔らかなキスを受け入れると、胸の奥に熱い感情が込み上げてくる。

私のウィルさんへの想いは、彼の言う通り……めまぐるしく色を変えていくのだった…-。

おわり。

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