鮮やかな街の中、賑やかな声があちこちから聞こえてくる…-。
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ウィル『今回の作品は、君の色を混ぜてみたかったんだ』
〇〇『私の色……?』
ウィル『なんせ……僕は、君の表情が大好きだからね』
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私の反応を予想していたのか、ウィルさんはふわりと優しく微笑む。
太陽の光に照らされ、彼の特徴的な眼鏡の装飾が艶やかに輝いた。
ウィル「そう。君は……君自身の色ってどんな色だと思う?」
〇〇「私自身の色ですか? えっと……」
(どんな色なんだろう?)
思いがけない質問に、私はあれこれ自分のことを考える。
(赤? それとも青……?)
どの色を思い浮かべてみてもピンとこず、返答に困ってしまう。
ウィル「難しい?」
〇〇「はい……」
ウィル「なら……僕が見た、君の色を教えてあげようか?」
(ウィルさんが、私の色を?)
どくんと、心臓が一つ打ち鳴る。
(ウィルさんから見た、私の色……)
〇〇「知りたいです」
ウィルさんの瞳に、私がどう映っているのか、それを知ることができると思うと、期待に胸が膨らんでいった。
…
……
それから、私達は染料の材料を見に街の市場へと向かった。
賑やかな大通りとは少し雰囲気が変わり、職人さんらしき人達が店先の鉱石や花などを眺めている。
ウィル「これはなんだろう? 紫にも見えるけど、染めてみたら変わるのかな?」
ウィルさんが石を手に取り、空にかざした。
陽の光を浴びて、石はウィルさんの端正な顔に薄紫の影を落とす。
ウィル「ああ……君にもある色だね」
〇〇「この色が、私にも……?」
自分をあちこち見まわしてみても、わかるわけもなく……
(どんな色で表現してくれるんだろう?)
期待を込めてウィルさんを見つめると、彼は、耐えられないとでもいうように笑い出した。
ウィル「そんなに期待されると、僕も緊張するなぁ」
〇〇「ウィルさんでも緊張することがあるんですか?」
驚きのあまり思わず聞いてしまうと、ウィルさんは噴き出して笑い始めた。
ウィル「僕だって、緊張ぐらいはするよ。 万人が僕の作品を支持してくれるわけじゃないからね。 でも、僕は自分がいいと思ったものを最高の形で表現したいんだ。 だから、君も自分の感性を信じて」
ウィルさんが私の背中をそっと優しく叩く。
大きく温かな手が、私に自信を与えてくれるような気がした。
(私の感性……か……)
ウィル「でも、まあ…-」
頭の後ろを掻きながら、ウィルさんが苦笑交じりに息を吐く。
〇〇「?」
ウィル「……こう思っちゃうよねえ。 君の前では完璧なウィル・ビートンでいたい……ってね」
瞳に恥ずかしさをにじませて、ウィルさんが鉱石へと視線を落とす。
つぶやかれた言葉が、私の胸の奥を甘くくすぐった…-。