そして迎えた、クライヴァーの親善試合当日…―。
観客が盛り上がりを見せる中、ついに試合が始まった。
カノエ「よし、一気に進むぞ!」
カノエさんの統率の下、私達のチームは相手チームの戦力を、どんどん削いでいく。
時間が経つにつれ、相手の駒は減っていって……戦況はこちらに有利なものとなっていった。
(これなら勝てるかも……)
その時、試合前に話し合った作戦を思い出す。
―――――
カノエ『あらかじめ異能力を発動させるタイミングを決めたら、予想外の事が起きた際に対応しにくい……。 なるほど、一理あるな』
チームメイト1『はい。カノエ王子の異能力は強力ですし、慎重になる気持ちもわかるんですが……。 俺達はまだ初心者ですし、いろいろ考えた結果、カノエ王子の判断に委ねるのがいいかと思って』
カノエ『……わかった。 判断は俺に任せてくれ。必ずお前らを勝利に導いてみせる』
―――――
(カノエさんは、どこで異能力を使うつもりなんだろう…―)
カノエ「○○!!」
〇〇「えっ?」
考えごとをしていた私の目の前に、いきなり死角から敵チームの騎士が現れる。
〇〇「……っ!!」
激しい攻撃を受けた私の剣に、小さなヒビが入った。
(どうしよう、次の攻撃で壊れちゃうかも……!)
その隙を見逃がさないとばかりに、敵が剣を振りかぶる。
その時だった。
カノエ「そうはさせない! 今、異能力を発動させる」
言うや否や、カノエさんの体が光り始める。
途端、大きな力がカノエさんに集まり、一気にエネルギーの渦となって敵の武器を破壊した。
(これが、皆の力を結集した力……!)
(でも、そのせいで皆の攻撃力が下がってしまう)
自分のためにタイミングを選べなかったかもしれないと思うと、冷や汗が出る。
〇〇「ごめんなさい、カノエさんに異能力を使わせてしまって……!」
頭を下げて謝りながら、悔しさに唇を噛んだ。
(……あの時、考え事なんかしなければ)
床を見つめたまま、顔を上げられずにいると……
カノエ「大丈夫だ。俺が使いどころだと判断したんだ」
〇〇「え?」
顔を上げ、きっぱりと言い切るカノエさんを見る。
カノエ「戦況を見てみろ、お前ならできる」
その言葉で辺りを見回すと、さっきの敵を倒したことで王への道が開けていた。
カノエ「王はもう目の前だ」
ニヤリと笑うカノエさんに自信をもらった私は……
〇〇「……!はい、いきます!」
私は自分に与えられた異能力を発動させると、王の元へと突き進んだ。
そして……
審判「勝者、カノエチーム!」
私達のチームの勝利が決まり、歓声が沸き起こる。
その声に押されるように、嬉しさが溢れた私は思わずカノエさんに抱きついた。
〇〇「やりました!カノエさん!」
カノエさんは一瞬驚きながらも、すぐに私を強く抱きしめ返してくれる。
〇〇「私達、勝ったんですね!」
カノエ「ああ……俺達の勝利だ。お前の機転と勇気のおかげだな。 ありがとう、○○」
〇〇「そんな……それは、カノエさんが守ってくれたからで……」
すると、カノエさんが気まずそうに視線を泳がせる。
カノエ「実は、お前が危ないと思ったら自然と体が動いていたんだ」
〇〇「そうだったんですか……?」
尋ねる私に、彼は気まずそうな顔をしたまま小さく頷いた。
カノエ「あれだけ作戦だとか偉そうなことを言っておいて……あいつらに謝らないとな。 だが、勝利できてよかった」
〇〇「……はい!」
カノエ「皆と信頼し合ったからこその結果だな。お前のことも、信じていた。 ありがとう。俺の傍で支えてくれて」
〇〇「そんな…―」
次の瞬間、カノエさんの声に熱がこもる。
カノエ「お前がいると、俺は強くなれるみたいだ。 だから、これからも……傍にいてほしい」
(それって……)
カノエ「改めて思い知ったよ」
私にもたらされたのは、まっすぐな言葉……
カノエ「お前のことが、好きだ」
口元近くで囁かれた後、カノエさんの腕に力がこもって、もう一度強く抱きしめられる。
(カノエさん……嬉しい……)
鼓動が伝わるくらいにぴったりと抱きしめ合い、勝利の余韻を噛みしめる。
二人の心が通じ合って、もっと強く結ばれたことに喜びを感じていると……
チームメイト2「やっぱり、俺らって邪魔なのかな?」
私達をからかう仲間の声が、聞こえてきたのだった…―。
おわり。