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カノエ『……俺が判断を間違えれば、チームが一気に形成不利になって迷惑をかけてしまう』
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苦しげに顔を歪め、カノエさんが悔いるように言葉を継ぐ。
カノエ「悪い、弱気な発言だった。こういう不安は伝染する……リーダーとして失格だな」
私は思いを込め、首を横に振った。
〇〇「いえ、私は嬉しかったです」
カノエ「え?」
〇〇「今までカノエさんは一人で抱え込むことが多くて……。 でも今、私に悩んでることを話してくれた……それが嬉しいんです」
そう丁寧に伝えると、カノエさんは次第に表情を和らげ……
ふっと、小さな笑みをこぼした。
カノエ「嬉しい、か……そうだな、お前に教えてもらった」
〇〇「きっとチームの皆さんもそうだと思います」
チームの皆という言葉……
それを聞いた瞬間、カノエさんの目に輝きが戻るのがはっきりとわかった。
カノエ「ああ、そうだったな……また間違えるところだった、ありがとう○○。 今度は間違えない。以前の俺とは違う。今は……お前がいるからな」
きっぱりと告げられた言葉に、胸が大きく音を立てた。
そして、私へと恐る恐る伸ばされた手が、頬に触れて優しく撫でてくれる。
(カノエさん……)
温かい手に思わず目を細めると……
チームメイト1「あの~……そろそろ練習始めたいんですけど、いいですかね」
カノエ「お、お前ら……!」
(皆、いつの間に……!?気づかなかった……!)
〇〇「すみません……!」
顔から火が出そうなくらい恥ずかしくて、私は顔をうつむかせた。
チームメイト1「いえ、こっちこそすみません。なんかいい雰囲気の時に……」
チームメイト2「帰りが遅いのが心配になりまして、様子を見にいこうと……」
カノエ「まったく……邪魔してくれたな」
(え……)
ぼそりとつぶやかれた言葉に、目を見張る。
(空耳……じゃないよね)
けれど……
カノエ「今は練習だな。後で」
カノエさんは、何事もなかったように背を向けて歩き出す。
(後でって……?)
〇〇「カ、カノエさん!」
慌てて隣に並び、彼の顔をおずおずと見上げる。
すると……
カノエ「はは……」
カノエさんは、イタズラっぽく笑ったのだった…―。
…
……
そして、カノエさんは改めて皆を集める。
カノエ「お前ら、相談がある。俺の異能力なんだが……」
カノエさんが自身の異能力の説明をすると、皆が盛り上がる。
チームメイト1「おお!すごい能力じゃないですか、発動するタイミングが肝ですね!」
カノエ「ああ。だが、局面を誤ると一気に形成が不利……負けてしまうだろう。 だから、お前達の知恵を借りたい」
カノエさんの言葉を聞いた瞬間、チームメイト達が満面の笑みを浮かべる。
チームメイト2「嬉しいです、カノエ王子が頼ってくれて!」
チームメイト3「絶対勝たないとな!任せてくださいよ!」
カノエ「……そうか。ありがとう」
会議はつつがなく進み、遅くまで練習を続けることになり……
練習を重なる度に、チームの絆はますます強くなっていったのだった…―。