写真を撮ってもらった後も、ラスさんと二人でクリスマスディナーを楽しみ……
やがて店を出た私達は、ひときわ美しいイルミネーションに彩られた広場を訪れる。
ラス「綺麗だね」
〇〇「はい……とっても」
もう夜も遅いためか、広場には人がほとんどいない。
その上、空から舞う雪が白いカーテンのように辺りを覆っていて……
まるで世界に二人しかいないような錯覚さえ覚える。
〇〇「……」
景色を見ながら今日一日のことを思い返しているうちに、繋いだ手に自然と力がこもった。
〇〇「今日は本当にありがとうございました。 ラスさんとデートできて、すごく嬉しかったです」
ラス「喜んでもらえたならよかった。オレもすごく楽しかったよ」
イルミネーションが照らすラスさんの笑顔は、その言葉が本当であると教えてくれる。
それほどまでに彼の笑顔は幸せそうだった。
〇〇「……」
私は思い切って、ずっと気にかかっていたことを聞こうとする。
けれど……
ラス「ねえ、〇〇」
先に口を開いたのはラスさんだった。
ラス「今日のデートは、キミの理想通りだった?」
〇〇「え?」
ラス「キミ、クリスマスデートに憧れてたみたいだったから」
〇〇「……!」
(それって……)
〇〇「もしかして、それでスレッドツアーや買い物を……?」
ラス「うん」
ラスさんが頷いた瞬間、ようやくずっと抱いていた疑問が解ける。
ラス「あの後、調べたんだ。キミと行くなら、どこがいいかなって。 クリスマスの時に恋人達が出かけるところとか、キミが喜ぶこととか……。 街を歩きながら、オレなりにね」
言い終えると、彼は私の頭を撫でて髪についた雪を払ってくれた。
雪の中、レストランを探してくれただけでなく、今日一日のデートのことも懸命に考えてくれていた彼に、愛おしさが募る。
〇〇「あの……本当に、特別な一日でした。今までのどんな日よりも……」
ラス「ありがとう。すごく嬉しいよ。 でも……。 まだ、特別な一日は終わってないよ」
〇〇「え……?」
真剣な眼差しを向けられ、思わず息を呑む。
ラス「もっと甘くて、特別な夜にしてあげる」
そのまま、ふわりと体を包み込まれて……ラスさんの唇が近づいてきた。
(ラスさん……)
重なった唇から、彼の気持ちが伝わってくる。
ラス「……オレの鼓動も速いでしょ?」
長いキスの合間に、ラスさんが優しく囁く。
確かに伝わってくる鼓動は驚くぐらい速かったけれど、それ以上に、私の鼓動は高鳴っていた。
〇〇「ラスさん、あの……」
彼と触れ合うことで、これ以上ないほど高鳴る鼓動が恥ずかしい。
そう思った私は、慌てて距離を取ろうとするけれど……
ラス「まだ駄目だよ。もっと……もっと甘いキスを、キミにあげるから」
甘い声が耳に届いたかと思えば、再び唇を塞がれる。
ラス「……」
いつものすべてを溶かすようなものとは違う、ただ唇を重ねるだけのキスからは、不思議なぐらい彼の愛情が伝わってきて……
気づけば私は、体の力を抜いて彼に身を委ねていた。
ラス「……ありがと」
やがて顔を離したラスさんが、私の髪を撫でながら微笑む。
ラス「キミに出会うまでずっと、デートなんて抱き合うまでの過程だって思ってたけど……。 愛する人とのデートって特別なんだね。 改めてそう思ったよ」
空から舞い落ちる雪のように、愛の言葉が柔らかく降り注ぎ……
それは大きな幸福感となり、私の心を満たしていった。
ラス「デートしてる間、キミの笑顔を見る度に愛しくて……幸せな気持ちで満たされた。 これが本当の愛なんだって、気づかされたよ」
〇〇「ラスさん……」
少し骨張った手が、頬に触れる。
ラス「こんなふうに思わせてくれるのは、キミだけだから。 〇〇……愛してる」
そっとまぶたが伏せられ、再びラスさんの唇が私の唇に触れた。
そうして、優しく触れるだけの温もりが離れてゆき……
ラス「本当の愛に気づけたって意味でもさ。 オレにとって今日は、すごく特別な一日なわけだけど。 どう? キミにとっても、より特別で甘い一日になった?」
少し悪戯っぽく微笑むラスさんを見ていると、愛おしさが溢れてくる。
〇〇「はい……。 ラスさんが贈ってくれた、特別な一日……絶対に忘れません」
ラス「〇〇……」
ラスさんの温もりが、私を包み込む。
白い雪が舞う街の空気は、身を切るような冷たさだったけれど……
彼の温もりに包まれている今は、少しも寒くないと……そんなふうに思うのだった…-。
おわり。