太陽最終話 恋する歌うたい

二人きりのホールに、クリスマスソングが響く…-。

じっと見つめてくるダルファーの視線を感じると、私の胸はどうしようもなく高まった。

(恥ずかしいな……私、ちゃんと歌えてるかな?)

歌に合わせて、楽しそうにダルファーがリズムを取っている。

(ダルファー、楽しんでくれてるみたいでよかった)

ようやく最後のフレーズを歌いきると、ダルファーが柔らかな拍手を送ってくれる。

ダルファー「……キミって歌うのがとても上手だね。それにすごく可憐だった。 他にもクリスマスの歌を知ってる?」

目を輝かせたダルファーに、私は慌てて首を横に振った。

〇〇「も、もう……無理です。恥ずかしくて」

ダルファー「うん。恥ずかしがってるのがかわいかった」

さらりと告げられた言葉に、胸に鼓動は速まるばかりで……

〇〇「……っ、もう出ましょう」

この場にいたらまたねだられてしまいそうで、私は足早にステージから下りる。

すると……

ダルファー「ふふ……かわいいなあ。待って、〇〇ちゃん」

追いかけるように、背後からダルファーの軽やかな笑い声が聞こえてきたのだった…-。

……

街は華やかな光に包まれ、降り積もる雪に煌めきを与える…-。

(もうこんな時間、デートも終わり……)

ダルファー「言葉が少ないね。〇〇ちゃん、そんなに恥ずかしかった?」

横を歩くダルファーが、私の顔を覗き込む。

〇〇「いえ……あっという間に一日が終わってしまったので、寂しいなと思って」

ダルファー「もう終わりだと思ってる?」

ダルファーが苦笑して、私の手をすくい取る。

ダルファー「まだキミを帰すつもりはないよ。それに、今日のお礼もできてない」

(お礼?)

首を傾げる私に、ダルファーが優美にお辞儀をした。

ダルファー「クリスマスのこと、たくさん教えてくれてありがとう」

〇〇「あまりちゃんと教えられてないかもしれないですけど……」

ダルファー「そう? あれだけで充分だよ」

〇〇「あれって?」

何のことだろうと思っていると……

スチル

くすりと笑う声と共に、甘い香りに抱きしめられる。

(え……!?)

早鐘を打つ心臓で息を呑んだ瞬間、耳に優しいメロディーが届いた。

(これ、さっき私が歌ったクリスマスソング……)

それは演奏会で歌うような神々しさと違い、もっと身近で素朴な歌い方だった。

けれど、紡ぐ一音、一音に温度が込もっていて、音が世界に放たれる度に心に明かりが灯るようで……

幸せな気持ちでその歌声に聴き惚れてしまう。

ダルファー「……キミの歌声、まだ耳に残ってる。歌う愛らしい姿も、ね」

〇〇「わ、忘れてくれると嬉しいです……」

思い出して恥ずかしくなり、身を捩るけれど……

ダルファー「かわいかったし、すごく幸せな気持ちになれたよ。だから、忘れない」

背中に回る手が逃がさないように、けれど優しく私を包み込んだ。

ダルファー「……不思議だな。 誕生日とか記念日とか……そういうの大事にしたがる女の子の気持ち、よくわからなかったんだ。 でも今は、大切な人と過ごす特別な日っていうのを、キミと過ごしてみたい」

ダルファーの柔らかな吐息が、耳をくすぐる。

ダルファー「キミがクリスマスの歌を一生懸命うたってくれる姿を見て、なんだかすごく愛おしくてね。 こんな気持ち初めてだから戸惑うけど……僕、キミが好きみたいだ」

(……ダルファーが私を?)

驚いて声が出せずにいると、顔をわずかに離し、ダルファーが私を覗き込む。

ダルファー「……ねえ、キミは?」

甘やかな眼差しに、切なさと喜びが胸に込み上げた。

〇〇「私もダルファーのこと……好きです」

笑顔で想いを返せば、ダルファーも応えるように微笑みを浮かべる。

見つめ合った瞬間、街のどこかで鐘の音が鳴り響き、さらに景色は光を増した。

ダルファー「ああ……今、歌が下りてきた」

ダルファーの指先が、私の頬に触れる。

ダルファー「今夜はずっと、僕の歌を贈るよ。 僕がどれだけキミを好きか、そのすべてを歌に乗せて」

〇〇「……ダルファー」

添えられた指先に手を重ね、そっと目を閉じれば……

美しくも温かなダルファーの歌声が、私のすべてを包み込むのだった…-。

おわり。

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