太陽SS 君への贈り物

青空が今日も街を包んでいる。

いい天気だ。

俺はと言うと…-

執事「ルーフェン様、お待ちください!」

ルーフェン「ちょっと買い物に行くだけだって、すぐ戻ってくる」

俺はというと、城の外に出ようとして、従者たちに引きとめられていた。

ルーフェン「〇〇に贈るプレゼントを買わないといけないんだ」

一昨日の晩、〇〇が体調を崩して寝込んでしまった。

(全部、俺が振り回したせいだ……)

(だから、俺は謝るためにも、あいつが喜びそうなものを買いに行かないといけないんだ)

執事「それならば、他の者に買いにいかせますので、ルーフェン様はここでお待ちください」

ルーフェン「あいつへのプレゼントは俺が用意しないと意味がないんだ。だから俺が行く」

(全部兄貴の受け売りだけど……)

(それでも俺が出来る事は全部俺がやりたいんだ)

ルーフェン「止めても無駄だぞ」

まだ引き止める従者たちを振り切って俺は走り出した。

後ろでは俺を呼び止める声が聞こえる。

(悪いな! 後でいくらでも怒られてやるから!)

勢いよく城門を押し開く。

明るい日差しが俺を包み込んだ。

街に出ると、俺は目に入った物を片っ端から買っていく。

〇〇に似合いそうな帽子、服…-。

ルーフェン「あの服もあいつに似合いそうだ! 花は何がいいかな……気になる花を全部買って、でっかい花束にしよう!」

〇〇のためなら、この街中の物全部買ってもいいぐらいだ。

ふと、果物屋が目にとまった。

ルーフェン「あいつが好きだって言ってた果物、なんだったかな……?」

艶々した果物を見下ろして、〇〇の顔を思い浮かべる。

その時、兄貴の言葉が頭をよぎった。

―――――

兄『好きなんだろ? バレバレだ』

―――――

ルーフェン「バレバレって!」

打ち消したくて、慌てて手を振る。

その時、俺はここが果物屋だった事を忘れていた。

ルーフェン「うわわっ……!」

手にぶつかった果物が、地面に転がり落ちていく。

ルーフェン「悪い! 今拾う!」

店主に謝ると、俺は慌てて果物を拾い上げる。

(顔が熱い……)

(きっと今、顔が真っ赤になってるぞ)

(まったく兄貴のやつ、何変な事言うんだよ)

ここにいない兄貴に文句を言っても仕方ないのは分かってる。

(そりゃ俺は……)

落ち着こうとしているのに、また兄貴の言葉が頭をよぎる。

―――――

ルーフェンの兄『もしかしてこの会話も、既に聞かれてたりして』

―――――

ルーフェン「あいつに聞かれてたのか!?」

(そうだった。あいつに聞かれてたかもしれないんだった)

(あの時、あいつの声が部屋の中から聞こえた気がしたんだ……)

(だったら俺……!)

ルーフェン「いや、あいつは寝てるはずだ! ききき聞こえてるわけないって! 兄貴にからかわれたに決まってんだよ!」

思わず手を握りしめる。

その手の中で、何かが音を立てた。

(ん? なんだ?)

その時になって、俺はりんごを持っていた事を思い出した。

ルーフェン「あいつへのプレゼントが!」

慌てて手を緩めて、リンゴを両手で持ち直した。

手の中で、真っ赤なりんごが艶やかに輝いている。

(握りつぶさなくてよかった……)

そのりんごに、あいつの顔が重なった。

ルーフェン「あいつを、好きか……」

(確かに、あいつといると楽しいし)

(あいつにもっと喜んで欲しいって思う)

(これが好きって事なんだよな……)

ルーフェン「なのに俺、あいつを振り回して具合悪くさせるなんて!」

またぐるぐるする頭を抱えて呻く。

でも、一度深く息を吐いて、立ち上がった。

(今さら過去を気にしても仕方ない。大事なのはこれから……)

ルーフェン「まずは謝るのが先だ!」

手に握ったりんごを空に軽く投げる。

真っ青な青空に、艶やかな赤が映える。

(きっと、このりんごも美味しいんだろうな)

(お前に渡したいものがこんなにあるんだ)

(言いたい事もいっぱいあるんだ)

(だから早くよくなれ)

(お前は元気に笑ってる方が似合ってる!)

りんごを掴むと、俺はまたプレゼントを探しに走り出した。

進む道先は、黄金色に輝いていた。

おわり。

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