太陽最終話 君といる世界

揺らめく焔を見つめながら、パティルがつぶやく。

ーーーーー

パティル「『あなたへの想いを、私は言葉で表すことができない。『ですから、この色にすべてを託しましょう』……その通りのことをやったんだよ、シモンは」

ーーーーー

○○「……」

7色の焔がゆっくりと燃え尽きる。

それを見届けてから、パティルがカーテンを開けた。

○○「……やっぱり、パティルはすごいね。本当に成功しちゃった」

パティル「別に、今までも再現できた奴はいたんじゃない。たんに気づかなかっただけで」

○○「それがすごいんだよ。どうしてわかったの?」

パティル「どうして、って……」

パティルは少しだけ驚いたように目を見開いた後……どこか大人びた表情で微笑んだ。

パティル「……シモンと同じくらい、僕が馬鹿だからじゃない?」

○○「え?」

パティル「……ありがとう。おかげで、僕は自由の身だ」

○○「……パティル?」

早速、国王様に報告するのか、パティルは足早に工房を出ていく。

(なんだろう、今の……)

違和感の理由も、原因もはっきりとはわからない。

けれど急に、パティルが遠くに行ってしまったような気がして…ー。

私はその場からしばらく動けなかった。

……

そして、建国祭当日…ー。

(なんだかあの日からずっと……パティルに避けられてる気がする)

シモンのインクの再現に成功し、国王様はお見合いの話を撤回した。

けれどあれからもずっと、パティルは工房に篭もったまま……

ーーーーー

パティル「暇なら見ていけば? 建国祭……僕の花火だけでも、見る価値あると思うけど」

ーーーーー

○○「……」

散々迷った末に、工房の扉を叩く。

けれど、中に人の気配はなかった。

(どこに行ったんだろう……)

ちょうどその時、遠くで花火が上がる音がした。

(花火……そうだ)

……

パティル「……」

一人バルコニーにたたずむ後ろ姿を見つけて、ほっと息を吐く。

パティル「……君、出かけなかったの?」

私に気づくと、パティルは少し驚いたような顔をする。

○○「うん。パティルは?」

パティル「人込みが好きじゃないから。僕はここからで充分」

○○「……一緒に見てもいい?」

パティル「別に、いいけど……」

○○「ありがとう……あっ!」

その時ちょうど、立て続けに大きな花火が上がった。

○○「わぁ……」

先ほどまでの気まずさも忘れて、目の前の光景を食い入るように見つめる。

手すりに頬杖をついてパティルが、ぼそりとつぶやいた。

パティル「一番最後の花火、よく見てて」

○○「えっ?」

どういう意味か聞き返そうとした時……目の前に、鮮やかな7色の光が降り注いだ。

(これ……シモンさんの?)

燃える虹のような、光でできた万華鏡のような……

あの時見た美しい色彩が、光の粒になって夜空を彩る。

パティル「……調整が難しくて、結局一つしか作れなかったんだけど」

○○「もしかして、パティルがずっと工房に篭もってたのって……」

パティル「……」

パティルがまつ毛を伏せて笑った。

パティル「君はこの花火を、他の誰かと一緒に見るんだと思ってた」

○○「え?」

パティル「想像すると、死ぬほど腹が立ったけど……でも、それで君が笑うならいいやって」

(それって……)

震えそうになる手を握りしめ、パティルの目を正面から見つめ返す。

○○「……私はずっと、パティルと一緒に見たかった」

パティル「え?」

○○「……他の誰かじゃなくて。 私が好きなのは、パティルだよ」

パティル「……」

急に脱力したように、パティルがその場に膝をついた。

パティル「嘘でしょ……君、まぎらわしい」

○○「だ、だって。パティルは、誰のことも好きにならないって……」

パティルは、ゆっくりと顔を上げて…ー。

その背筋が伸び、まとう雰囲気が変わった。

パティル「知らなかったんだ……君に出会うまで」

○○「……パティル?」

何か大切なものに触れるように、パティルがそっと自分の胸に手をあてる。

パティル「好きだよ。 君に出会ってから、世界の色が変わったんだ。 道ばたの花とか、明け方の空とか……何も変わらないはずなのに、前よりもずっと綺麗に見える」

まっすぐで優しい微笑みに……心臓の鼓動が痛いほど速くなっていく。

パティル「君が好き……そうやって、すぐに顔を赤くするところも」

○○「パティル……」

パティル「ねぇ、君……言ったよね。他の誰かじゃなくて、僕がいいって」

月明かりを背に受けながら、パティルがゆっくりと立ち上がり……

○○「……!」

目を見開いた私の額に……唇の柔らかな感触が降ってくる。

パティル「君が誰といてもいいって言ったけど、やっぱり取り消す。僕の傍にいてよ」

○○「……うん」

頷いた頬を、優しい手のひらが包み込む。

引き合うように重なった唇の温もりに……私はそっと目を閉じた…ー。

おわり。

<<太陽7話