…
その夜のこと…―。
オリオン「〇〇……?」
目を覚ましたオリオンが、慌てて辺りを見回している。
オリオン「本当に……いてくれたのか」
ベッドの側で、椅子に座り眠る〇〇の姿を見つけると、その顔に柔らかな笑みが浮かんだ。
オリオンは、そのまぶたにキスを落とそうとして……
ふと、その動きを止めた。
しばらく〇〇を見つめたあと……
オリオン「すまなかったな……」
つぶやくように言って、ゆっくりと立ち上がると、オリオンは部屋を出ていった。
…
(あれ……今、誰か……)
物音に目を開けると、寝ていたはずのオリオンさんの姿がない。
〇〇「大変……!」
私は慌てて廊下に飛び出した。
オリオン「〇〇のこと、頼む」
部屋を出て行くと、廊下の角でオリオンさんが医師と話している。
オリオン「あいつ、逃げたかったって言っていた。 それでも、傍にいてくれるような奴だ。 それなら……俺が傍にいると、あいつは心が休まらないだろうから」
(オリオンさん……)
オリオンさんの苦しそうな声が私の胸を締めつける。
唇から静かに昇って行く水泡が切なく空に浮かんでいた…―。