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医師「オリオン様が力を与えてくださらなかったら……あなたは、あと少しで死ぬところだったのですよ」
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その3日後…―。
私は、目を覚まさないオリオンさんを見つめていた。
(オリオンさん、ごめんなさい)
目覚めた時に枕元に置かれていたネックレスを握りしめ、
私はその手でそっとオリオンさんの手に触れる。
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〇〇「どういう、ことですか……?」
傷を負ったオリオンさんを愕然と見つめながら、お医者様と思われる男性に尋ねた。
オリオン「ただし、地上に戻る力を得るには……より濃密な海底人とのつながりが求められる。 子を成すことさ」
〇〇「シャボンの外に出るためには、海底人との子どもを産む必要があると聞きました」
男性「……もう一つだけ、方法があるのです。 海底人の血を大量に浴びれば、力を得ることができます」
〇〇「……!」
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(私のために……ごめんなさい、オリオンさん)
〇〇「……!」
(手が!)
かすかにオリオンさんの指が動き、私は椅子から立ち上がった。
〇〇「オリオンさん……っ」
私の声にかすかに眉をしかめ、オリオンさんの瞳が開く。
オリオン「〇〇……」
〇〇「よかった!今お医者様を呼んできますから」
急いでその場を去ろうとすると、オリオンさんに手を引き寄せられた。
オリオン「いい。 それより……聞きたいことがある。 事故か?それとも……帰ろうとしたのか?」
〇〇「……っ」
オリオン「何故シャボンの外に出た?」
(ちゃんと、正直に言って謝らなきゃ)
一つ、大きく息を吸う。
〇〇「……ぼんやりしていたら。 いただいたネックレスが波にさらわれてシャボン玉の外に出てしまって。 夢中で追いかけたら……いつの間にか……」
オリオン「……それだけか? 俺から逃げたかったんじゃないのか?」
〇〇「それは……」
(確かに逃げたいって、思ってた)
(正直に……言わなきゃ)
オリオンさんの瞳を見つめ、私はゆっくりと頷きかける。
オリオン「……なぜだ。 俺は今まで、欲しいと思うものは全て向こうからすり寄ってきた。 モノも……女だって、なんでも。 お前はなぜ逃げる? どうしたらお前は俺のものになるんだ? どうしてお前は
思い通りにならない!?」
(どんどん顔色が……!)
オリオン「……好きなんだ。 お前の心が俺にむかなくても……それでも傍に置いておきたいんだ。 離れていくのは、耐えられないんだ」
その真っ直ぐな言葉に、私の胸が甘く軋んだ。
〇〇「オリオンさん、どうか……っ」
どんどんと蒼白になっていくオリオンさんをなだめようとした時……
オリオン「……っ」
オリオンさんが、急に咳き込んでしまう。
〇〇「すぐにお医者さんを呼んできますから!」
オリオン「断る。 医師がくれば、きっと薬を使ってでも眠らされる。 眠っている間にお前がまた、いなくなるかもしれない」
〇〇「いなくなったりしません。 オリオンさんが目を覚ますまで、ずっと傍にいますから」
必死に言い募ると、オリオンさんは私の瞳を覗き込む。
そうして手を伸ばし、私の手を引き寄せると、その手を握ったまま、眠りに落ちていった…―。