太陽最終話 ご褒美をちょうだい

星々が輝いて、その煌めきを強くする頃…-。

ダグラス「お返し、ねぇ……。 ……なら俺は…―」

夜を背にして私を振り向かせたダグラスさんは、静かに口を開いた。

けれど言葉の続きは、そのまま彼に飲み込まれる。

(どうしたんだろう?)

不思議に思い、ダグラスさんを見つめていると…-。

(よく見れば、ダグラスさん少し顔が赤いような……)

〇〇「ダグラスさん……もしかしてお酒に酔ってるんですか?」

ダグラス「うーん……そうだね、君には酔っているかもしれない。 〇〇をもてなしてあげようと言ったのにこれじゃ形無しだ」

彼は私の手を取って、指を一本一本丁寧に絡め取った。

(熱い……)

彼の体温が、繋いだ手を通してひときわ伝わってくる。

ダグラス「とりあえずホテルに戻ろう、続きはそれからだ」

ホテルに到着すると、ダグラスさんはカウンターで手続きをして私の元へ戻ってきた。

ダグラス「〇〇の部屋はキャンセルしてきた。今夜は俺と一緒の部屋で過ごそう」

〇〇「え……」

ダグラスさんの言葉が、私の胸をにわかに騒がせる。

〇〇「あ、あの……」

ダグラス「大丈夫、怖がらないで。俺はこう見えて紳士だよ」

そう囁いて、彼は私をホテルの最上階フロアーにあるスイートルームへと案内したのだった…-。

ダグラス「さあ、どうぞ」

ベッドルームの扉を彼が開くと、落ち着いた香りが漂ってきた。

部屋を見渡すと、白い貝殻を使ったアロマランプが焚かれている。

(いい香り……これは海の香り?)

(ダグラスさんと一緒に見た、海の……)

どこか懐かしい香りを吸い込むと、彼に手を引かれて大きなソファーに座らされた。

そして…-。

〇〇「あ……」

ダグラスさんの長い指先に顎を傾けられる。

目の前にいるダグラスさんは、この上なく穏やかな表情を浮かべていて……

ダグラス「このアロマ、気に入ってくれたかい?」

〇〇「この香りって……」

ダグラス「そう、俺の国……アンキュラのアロマオイルだ」

〇〇「やっぱり、ダグラスさんの……」

懐かしく香る匂いに、彼の故郷であるアンキュラの地を思い出す。

エメラルドグリーンのどこまでも続く海に青い空……

そして潮の匂いを運ぶ海風のあの爽やかな心地よさ……

〇〇「だから……懐かしいって思ったんですね。私、この香り大好きです」

ダグラス「ああ、あの海風にも似た穏やかさの中に強さのある香りだ。 君も好きだと思ってくれて嬉しいよ……」

キャンドルの優しい光が、彼の傷跡の残る顔をゆらゆらと揺らす。

ダグラス「今日は、楽しく過ごせたのかな?」

〇〇「はい、とっても」

彼はそっと私の瞳を覗き込んで、少し甘えたような声色で私に問いかける。

ダグラス「じゃあ、俺にも少しだけ君の手からご褒美をくれるかい?」

〇〇「え……ご褒美って」

(どうしよう、何を……)

頭を悩ませて彼の顔を見ると、ピアスの光る唇が色っぽく笑みを浮かべていた。

(ダグラスさんに私が今できること……)

目を閉じ、少しの勇気を胸に、彼の唇へそっと自分の唇を重ねた。

微かに触れただけなのに、重ねた唇はひどく熱くて……

ダグラス「……」

〇〇「これが私の……おもてなし、です。 ……駄目でしょうか?」

ダグラス「ううん、すごくいい。ねえ、今のおかわりしてもいいかな? ……俺は海賊だから、欲しがりなんだ。目の前のお宝は全部いただく主義でね」

〇〇「!」

(おかわりって……!)

ダグラス「ふふっ、駄目だね、俺は……。 君をもてなしたいって思ってるのに、俺は君から幸せをもらってばかりだ」

〇〇「そんなことは……」

ダグラス「……だと思うなら、もう一度もらえるかい?」

(もう一度……)

心臓が高鳴る中、再び彼の唇に顔を近づけた。

けれどーー

〇〇「あ……」

その瞬間、私の唇が触れるより早く彼の顔が迫ってきて、強引に唇を奪われてしまった。

強く、そして深く……

心地よい海の匂いに包まれて、私は彼がくれた幸せに溺れてしまいそうだった…-。

おわり。

<<太陽7話||太陽SS>>