夕陽が窓辺からレストランバーを照らすの中…-。
ダグラスさんの甘い囁きが私の耳をくすぐる。
(……言わなきゃ)
夕陽に赤く照らし出された彼の顔を見て、今日一日のことを思い出す。
―――――
〇〇『エスコート……ですか?』
ダグラス『ああ、いろいろ行事続きで〇〇も疲れただろう? そんな君に、『おもてなし』ってやつをさせて欲しくて』
―――――
(本当に楽しかった)
(ダグラスさんが、まだ私と一緒にいたいと思ってくれているなら…-)
〇〇「私も、ダグラスさんともっと一緒に過ごしたいです……」
彼への感謝を込めて、素直な気持ちを言葉にする。
ダグラス「……っ」
彼は、息を呑んで自分の口元を手で覆い隠した。
〇〇「あの、ダグラスさん?」
私の視線を受け止めたダグラスさんが、くくっと困ったように笑う。
ダグラス「完敗だ」
〇〇「えっと……」
ダグラス「俺の完敗だって言ったんだよ。 そんなにかわいいことを言うなんて……。 やっぱり君は、俺がこの人生で手に入れた一番の財宝だな」
〇〇「……っ」
静かに囁かれた瞬間、彼は私の手を取った。
海の色のような深いグリーンの瞳が熱を持ってゆらめく。
ダグラス「〇〇姫。今宵は……俺と美しい星を眺めて過ごしませんか?」
私の手を軽く握ったダグラスさんが、ごく自然にそんなことを口にする。
まっすぐな言葉が胸に届き、自然な気持ちで返事をすることができた。
〇〇「……ありがとうございます。すごく嬉しいです。 きっとダグラスさんはあのエメラルドグリーンの海で、綺麗なものにたくさん出会ってるんですよね」
ダグラス「……」
〇〇「そんなダグラスさんに褒めてもらえるなんて、本当に…-」
言葉が言い終わらない内に彼にそっと背中から抱きしめられた。
きゅんと、胸の内側で小さく心臓が音を立てる。
(ダグラスさんの腕、温かい……)
(このまま目を閉じて身を委ねてしまいたい……)
〇〇「私も何か、この嬉しい気持ちのお返しがしたいです……」
ダグラス「お返し、ねぇ……」
独り言のように囁かれた言葉が、間近で耳を熱くする。
ダグラス「……なら俺は…-」
そう言いながら、彼は私を自分の方へ振り向かせた…-。